Plan...

□ふぁいぶ!
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 「マぁルコせんぱあぶぉおぉぉッ!!!」

「懲りない奴だよい」

背後から飛びつこうとしてきた変態女を軽く避けて、ついでに足を掛けてやる。
すると、なんとも愉快な悲鳴を上げて、まるで漫画のように身体が縦に回りながらゴロゴロと転がっていった。
あれでいつも無傷なんだから、いったいどんな身体をしてるんだと不思議に思う。


「よお、青春してんなぁ〜!!」

その声がした瞬間、俺は振り向きもせず足早に歩みを進めた。

「おいおい!無視すんなって!!」

何事もなく教室に戻ろうとしたが、肩を掴まれ舌打ちした。
ったく、面倒なのに捕まっちまったよい。



「なんの用だよい、赤髪」

「せめて先生つけろよ・・・。
俺ぁただ、生徒の純粋な恋路を暖かーく見守ってるだけじゃねぇか」

「恋路じゃねぇよい。
しかも、アレは純粋なんてもんじゃねぇ、汚れた変態だよい」

俺は間違ったことを言ってないと思う。
その証拠に、赤髪も「変態」の言葉に「あー・・・まぁ、なー・・」と歯切れが悪いのだから。
ジトリと赤髪を睨んでいると、わざとらしく咳払いをして「とにかく!」と声を張った。



「あいつはお前のこと、本気だと思うぜ?
行動はアレだけどな」

肩に置いていただけだったはずの手が、いつの間にか馴れ馴れしく腕を回してぐいっと引き寄せられる。
そうして小さな声で言うのは、赤髪なりの気遣いなのだろうか。

赤髪がそちらを見たので、俺も目を向ける。
どうやら赤髪と一緒にいたらしきエースの弟と長っ鼻、それから小せぇトナカイ。
三人が見下ろしているのは、言わずもがなあのまま転がってどうやら壁に激突したらしい変態女だ。

「お、おい、大丈夫かぁ?」

「いったあぁい!!」

「すげー!擦り傷一つねぇぞ!!」

「はははは!お前、化け物だな!!」

「エースの弟にだけは言われたくないっ」


盛大に笑うエースの弟にあっかんべーを返し(どっちが先輩かわかりゃしねぇ)、俺の視線に気付いた変態がぶんぶか手を振って叫んだ。


「せぇんぱああい!今日は2人っきりで帰りましょおおおぉぉっ!!!

「懲りねぇ奴だなぁ、お前・・・」

いいぞ長っ鼻、もっと言ってやれい。


「恋はいつでもハリケーンだから!!」

わけわかんねぇよい。


「なんかわかんねぇけど、すっげぇな!お前!!」

「えへん!!」

トナカイ、キラキラした目でその変態を見るな。
せっかくの純粋な目が腐るよい。


「やっぱお前、面白ぇなあ!!」

「まあね!!!」

何を誇らしげに胸張ってるんだい、あの馬鹿は。



いちいち突っ込んでたらキリがない。
アイツが俺に突っかかるようになってきて、いったいどれくらいの月日がたったのだろう。

それでも、あの変態は毎日飽きることなく俺に突進を続けてくる。
その猛攻に鬱陶しく思うことはあっても、面倒だと思うことがあっても、


俺は、アイツ自身そのものを拒んだことはない。





「アイツが真っ直ぐな馬鹿なのは、知ってるよい」


出会った時から、アレは馬鹿だった。
もうしばらくは、このいい退屈しのぎを黙って過ごしたい。



俺は赤髪の腕を振り払って教室へと向かう足を再び動かした。


最近の日課。


(え、なんですかー?)
(うるせぇ、さっさと補習行ってこいよい)
(あたしはエースの補習に付き合ってるだけですー!!)


(シャンクス、どうしたんだ?)
(・・・青春って、いいなぁ)

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