Plan...
□ふぁいぶ!
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「いい加減にしないと元々つぶれた顔をもっと窪ませるよい」
「いやん!そんな過激なマルコ先輩もすてぎゃンッ!!!」
次の授業が移動教室だったので廊下を歩いていると、案の定飛んでやってきた女。
別に優等生な訳ではないが、授業に遅れると理由をつけて変態女の顔面にチョップをかましてやり、無理矢理道を開けた。
「懲りない奴だよい」
「おいおい、流石に顔面チョップは可哀想じゃねぇのかい?」
溜め息を吐きながら止めた歩みを進めると、後ろからイゾウが声を掛けてきた。
あいつは時たまエースと一緒にうちのクラスへ来ることがある。
場所も時間もわきまえず今のような変態っぷりを発揮するので、最初の頃こそ引いていた連中だったが、最早今では馴染みの光景と化している。
それどころか、イゾウのようにあの変態を哀れむ声さえ出てくる始末。
どこかに俺の味方はいねぇのかよい。
「拳骨の方が良かったかねい?」
「可愛がるのも大概にしとかねぇと、離れていかれるぜ?」
「ンな簡単に離れるくらいなら、もうとっくの昔に離れてるだろうよい」
「くく・・・そうかい。まあ、手加減はしてやれよ」
片手に一掴みで持つ教科書類を肩に乗せながら喉奥で笑うと、もう片手でひらひらと手を振り先を歩いていくイゾウ。
その背中を眺めてもう一度溜め息を吐き出すと、予鈴が鳴ってしまった。
次の授業の担当はガープのじじいだったと思い出せば、(相手するのが)面倒にならない内にさっさと教室に入らねばと、歩幅を広げて教室へ急いだ。
「サッチ!おべんとちょーだい!!」
「腹減って死にそうだぁ!!」
「てめぇの分はねぇぞ」
「ええー!なんで!!」
「なんで俺がエースの弁当まで作らにゃぁなんねーんだよ!!」
「てめぇ等堂々と3年の教室に入ってくんなよい」
俺の忠告など勿論耳には入っていない。
入っていたところで、その言葉はものの数秒で消去されているだろう。
サッチはリーゼントが邪魔だが、こう見えて手先が驚くほど器用だ。
料理は得意中の得意で、毎朝手の込んだ弁当を自分ともう一人分作っている。
その一人分というのは、いわずもがなこの変態女の分だ。
馬鹿という生き物は食い物に目が無いらしい。
この時ばかりは変態女も小走りで真っ直ぐサッチに駆け寄り弁当を受け取り、いつの間にかジョズが用意していた席に座って弁当を開ける。
その表情といったらまるで幼い子どものようにうきうきと楽しそうなのだから、そうしていればそれなりに可愛いものを、といつも思うのだ。
「里芋の煮っ転がしだ!サッチ大好き!!
あ、でも勘違いしないでね好きは好きでもそういった好きじゃなくて、勿論一番はマルコ先ぱ「いいから黙ってくってろい」」
そして、いつも少しでもこいつを可愛いと思った自分が馬鹿であったと後悔する。