Plan...

□ないん!
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 廊下をただ歩くということが、どれ程快適なことか。
後ろから飛びつかれることもなければ、奇声に近い声で己の名を呼ばれることもない。

最初は感動すら覚えたはずなのに、今ではなんともなしに後ろを振り返ってしまう。


そこに、変質的な笑みを浮かべた馬鹿はいない。
やってくる気配もない。

それもそのはずだ。
追いやったのは、この俺なのだから。



あれから、一週間が経とうとしてる。
約1年程前、初めて会った日から欠かさずムササビのようにダイビングしてはコンクリートと熱烈なキスを交わしているあの馬鹿が、一週間も顔を出さない。

それどころか、色気より食い気のあいつがサッチのところに弁当を取りにさえこない。


余程、俺の言葉は鋭利だったのだろうか。
確かに、この間は俺も言いすぎた。

以前にも言ったと思うが、俺はあの変態を疎ましく思うことはあっても(いや、常々鬱陶しいと思ってはいるのだが、)本気で拒んだことはない。
それが、この間は苛立ちに任せて、初めてアイツを突き放した。

確かに言い過ぎたと思う。思うが、しかし、事実だ。



来年になれば、俺も勿論サッチもいない。
そうなった時、アイツは学校生活の中でいったい誰を頼る?

あの馬鹿は赤の他人だろうが人の言うことは簡単に信用する癖、頼ることはない。
絶対的な信頼と心を許せる人間にしか頼るという行為をしないのだ。
エースは同じクラスということもあって仲が良いし、俺が見ている限り心を許している。だが、頼るのとはまた違う。
むしろ、頼ってるのはエースの方だ。主に食べ物のことに関してだけだが・・・。

勉強に関して言えば俺だが、その他に関しては大概サッチを頼って生きてる。
俺達以外、あいつが頼れそうな人間に心当たりがない。



そんな時に、あれだ。

一年のトラガルファーと大層仲良さ気に変態トークに花を咲かせていたではないか。
類は友を呼ぶとはよく言ったもんだよい。


医者の息子で学年では常に成績トップ。変人という噂も聞くが、それ以上に女子生徒の人気も高い。
人気どうのはさておき、どうやら変人同士あの二人は馬が合うらしい。

こちらとしては願ったり叶ったりだ。
サッチはただの女たらしだと嫌がっていたが(人のこと言えねぇ癖に)、勉強面で言えばあの馬鹿とエースとサッチはほぼ俺のおかげでここまで進級してこれた。
サッチは良しとして、学年が一つ下である二人が俺抜きで卒業できるかは正直難しいだろう。
別に自意識過剰なわけではない。
自他共に認めている事実だ。現にあの二人の担任から一度「苦労を掛ける」と労われたことがある。


トラガルファーなら授業で習っていようが習っていまいが関係なく、教科書を見れば理解することができるはず。
そうすればサッチが懸念する「留年」の二文字はとりあえず消える。
俺としても長期のお守りからようやく開放され、一石二鳥だ。



その、はずなのに、




なんで俺はここにいるんだ。



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