Plan...

□すりー!
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 ただいま4時限目終了5分前。
あたしはかれこれ15分前からここに息を潜めている。

ここ、というのがどこかというと、保健室前の茂みの裏側だ。
もっと細かく言えば、グランドへと続く外の道である。
学校の校門とは裏側にあるグランドに行くためにはここを通らなければ行けない。
逆に言えば、学校の裏側にあるグランドに行く以外、こんな道は使わない。
グランドを使用する授業と言えば、言わずもがな体育の授業だが、制服姿のあたしを見ていただければわかる通りあたしのクラスは体育の授業ではない。

では何故こんな所にいるかというと・・・・・





「見たかよマルコ!俺様の見事なスーパープレイ!!」

「シュートしたのは俺だよい」

「ばっか!俺様あってのゴールだろーが!!」

あ、きたきた!!

あたしは事前に作っておいた茂みの隙間に顔を近付ける。

遠くからやってくるまばらな男子の軍団。
その中に、認めたくはないが一応幼馴染であるサッチと、愛しのマルコ先輩!!


季節は夏。最近は地球温暖化も進み、この季節になると日中は35度にもなる日だって少なくない。
だというのに、真っ赤に燃えた太陽の下で体育をやるとは何事だ。熱中症で殺す気か。
と、去年までは散々愚痴っていた訳だが、物は考えようだ。



季節は夏。ギラギラと照りつける太陽、35度の生温い微風。
そんな中で長袖長ズボンでいられるわけがない。
つまり、今体育の授業を受けていた彼等は半袖短パン!
勿論、愛しのマイダーリンも例外ではない。


あぁ、真っ白なTシャツが眩しい・・・!



「ったく、こんな炎天下でサッカーなんて信じられねぇよい」

「その割にはマジだった癖に、よく言うぜ」

マルコ先輩のサッカー姿・・・!!み、見たかった!!
くそ、今度は授業内容も調べてから計画練ろう。
だがしかし、この真っ白なTシャツ姿が見れただけで大収穫である。

「お前がパス回してくるからだろーが。
おかげで汗掻いちまったよい」

眉間に皺を寄せて額に浮かぶ汗の粒を手の甲で拭うマルコ先輩。
あぁ、なんてセクシーなんだ・・・!!
あの汗になりたい。っていうより先輩の汗になりたい。
むしろ先輩と同化したい!!


夏の神様!ありがとうっ!!
真夏の太陽サンキュー!!!

あたしは目一杯空に向かって感謝した。



おっと、いけないいけない、通り過ぎる前に写メ撮らなきゃね。


こそこそ音を立てないように携帯をセットすると、手ブレのないよう心掛けながら慎重にタイミングを見計らった。

標的は動いている。しかし、カメラはこの茂みの穴から動かせない。
チャンスは1回・・・・その1回に全てを掛ける!!



そして、


遂に、

その瞬間!!






パシャッ



・・・と、・・撮れたああぁぁぁっ!!!

しかも、Tシャツを摘んでパタパタと風を通していた瞬間を激写することに成功したのだ。
故に!なんとフレームにはチラリと先輩のお臍が覗いている!!
しかも!なんともんまそーな腹筋付き!!


腹チラ!腹チラッ!!
これはなんとも激レアな写真だ!!

太陽の神様!!ありがとーーーーーーッッ!!!!!


「ぐふふふふふ・・・・」

あたしは浮かれ過ぎて、気が付くことができなかった。








「楽しそうだねい、この変態女」


背後の愛しい敵に。

あたしはまるで油の切れたブリキの人形のように首を後ろに回した。
そこにいらっしゃるのは、紛れもなく、マイダーリン。

太陽を背中に背負っているため逆光となってお顔が拝見できない。
見えない表情が更に怖い。


「なにやってんだい?こんな所で」

「ま、真夏の太陽で光合成をしようかなー・・・なんて思ってみたりなんだり・・・・・・あ、あはっ」

だらだら冷や汗を掻きながら努めて明るく振舞ってみたが、逆効果だったようだ。
がしっ!と頭を鷲掴みにされ、逃げられぬよう固定された。

そのままマルコ先輩はしゃがむと、あたしに目線を合わせて満面の笑顔を向ける。

普段なら、「なんだキスの合図か受けて立つぞコノヤロオオォォォォォ!!!!」とぶっちゅーするために飛びついているところだが、如何せん空気がそれを許さなかった。
これは、不味い。
今ふざけたりしたら、まず間違いなく、




あたしの命は、ない・・・!!



「選ばせてやるよい」



「自分でデータ消すか、俺がてめぇごとその携帯を木っ端微塵にしてやるか」


体育授業の日課。


(うぅ・・・さようなら、腹ちらマイダーリン・・)
(他に変な写真持ってねぇだろうな)


(・・・・・・・・・・・・・・・。)

(・・・・・携帯こっちに寄越せ)
(いーやあああああああぁぁぁぁぁ!!!!!)


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