この想いを消して

□拉致
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カルマは気がつくと
今の自分の状況を冷静に整理した。

不良たちに絡まれ
女子たちが攫われた。

薄っすらと覚えているのは
名無しが自分の名前を
慌てた様子で叫んだこと。

後頭部の痛みからすると
後ろから殴られそうになったカルマを
助けようとした声だったことに気づく。


━━━…名無しちゃんの
あんな必死な声…初めて聞いたなぁ


「み、みんな‼︎大丈夫ですか⁉︎」

「…良かった、奥田さんは無事で」

「…ごめんなさい。
思いっきり隠れてました」


渚が少しホッとしたように言うと
奥田は申し訳なさそうにした。

全員攫われなかっただけよかった。

奥田が気に追うことなど
一つもない。

カルマは少し意識があったときにみた
不良たちのことを思い出す。


「………。車のナンバー隠してやがった。
多分盗車だし、どこにでもある車種だし…。
犯罪慣れしてやがるよ、あいつ等」


殴られたところがまだ痛む。

カルマは痛むところをさすりながら
額に青筋を立てた。


「通報してもすぐ解決はしないだろうね。
…ていうか、俺に直接処刑させて
欲しいんだけど」


声のトーンとカルマの顔からは
どう見てもかなり怒っている。

それもそのはず。

大事な仲間が連れ去られたのだ。

自分はそれを守ることができなかった。

奥田の話によれば
名無しは自分を鉄パイプで殴った男を
ボコボコにしていたらしい。

彼女の腕ならそのくらい容易に
やってのけるだろう。

だが、名無しがそこまでキレるとは
思わなかった。

それもカルマのために。

仲間を傷つけた連中を
許せなかっただけかもしれない。

名無しはカルマと同じように
殴られて連れ去られたことを聞き
カルマは更に苛立った。


━━━名無しちゃんに
手をあげるなんていい度胸してるよねぇ…


見つけたら名無しを殴ったやつを
半殺しにすることを心に決めた。
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