この想いを消して

□拉致
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「へー。祇園って奥に入ると
こんなに人気無いんだ」


八坂神社をまわったあと、
殺せんせーを殺すためのスポットを
見にまわる。

道幅は狭く
一見さんお断りの店が多いようだ。


「目的もなくフラッと来る人もいないし
見通しが良い必要もない。
暗殺にピッタリなんじゃないかと思ったの」

「さすが神崎さん。下調べカンペキ!」

「ホントカンペキ〜」

「「「「⁉︎」」」」


自分たちとは反対側の通路から
歩いてきたのは
電車内でぶつかった高校生。

どう考えてもたまたま通りかかった
という風にはみえない。

狭い道幅で
通路を塞がれてしまった。


「チッ…」


名無しは軽く舌打ちをする。

こんな三下に構っている場合ではない。

退路を断たれたら
もう強行突破をするしか方法はない。


「なんでこんな拉致りやすい場所
歩くかねぇ」


不良たちは次々と現れ
名無したちとの距離をつめていく。

下卑た笑い方。

見ているだけで吐き気がする。


「……何、お兄さん等?
観光が目的っぽくないんだけど」


挑発的な目。

カルマは男に声のトーンを少し落として
話しかける。


「男に用はねー。女置いておうち帰んな」


その言葉を聞いた途端
カルマは男の顎を掴み、
下から上へと勢い良く突き上げる。

そして、男の両目に指を突っ込み
近くにあった電柱めがけて
おもいっきり頭を当てた。

やられた男は
目を抑えて悶えている。

よっぽど痛かったのだろう。

そんな男をよそに
カルマは余裕そうに渚に話しかける。


「ホラね渚くん。目撃者いないとこなら
ケンカしても問題ないっしょ」


カルマは気づいていなかった。

背後から鉄パイプを持った男が
その得物を大きく振り上げていることを。



その様子に気づいた名無しは
咄嗟にカルマの名前を呼んだ。


「カルマくん後ろ‼︎」


だが叫んだ声は虚しく
カルマの頭に鉄パイプが
クリーンヒットした。

それと同時に
カルマは地面にくずれる。


「カルマくん…?カルマくん‼︎」


呼んでもピクリとも動かない。

頭から血は出ていないようだが
かなり強い音がした。

おそらく気絶しているだけだろうが
名無しはカルマが動かなくなったことに
とてつもない恐怖を覚えた。

目の前が真っ暗になる。
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