この想いを消して

□拉致
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「でもさぁ、京都に来た時ぐらい
暗殺のこと忘れたかったよなー」


杉野がため息まじりにそう言う。

確かに。

自分たちも他の生徒たちのように
勉強も何もかも忘れて
京都の街並みをゆっくり楽しみたい。


「いい景色じゃん。
暗殺なんて縁のない場所でさぁ」

「そうでもないよ杉野」


そう言った渚は少し得意げに
寄りたいと言ったコースに
みんなを案内した。

そこはすぐそこのコンビニ。

そのコンビニの近くには
坂本龍馬という名前が彫られた石像。

それを見たカルマは"あ〜"と
何かが分かったかのような声を上げる。


「1867年、龍馬暗殺。『近江屋』の
跡地ね」


渚はカルマの言葉にうなづくと
さらに続ける。


「さらに歩いてすぐの距離に
本能寺もあるよ。
当時と場所は少しズレてるけど」


渚の言葉に名無しは、
なるほどと思った。

1582年の織田信長も
暗殺の一種だからだ。

このわずか1キロぐらいの範囲の中でも
ものすごいビックネームが暗殺されている。

知名度が低い暗殺も含めれば
まさに数知れずだ。

京都は暗殺の聖地だと言えるだろう。


「なるほどな〜。
言われてみればこりゃ立派な暗殺旅行だ」


杉野は渚の言葉に感嘆の声を漏らした。

京都は暗殺と無関係な土地ではなく
むしろ結びつきの強い地だ。

E組の生徒たちにとって
暗殺との関係性を結びつければ
とても意味のある修学旅行といえよう。
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