この想いを消して

□体育
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「次っ‼︎○○名無し!前へ‼︎」


名無しが呼ばれた途端
クラスのみんなが興味深げに集まった。

名無しがクラスにきてから
まだ誰も一度も彼女が殺せんせーに
暗殺を仕掛けているのを見たことがない。

どれほどの強さなのか。

そもそも自分たちと同い年の少女が
強いのだろうか。

皆は烏間と名無しの勝負に
固唾を呑んで見守る。


「よろしくお願いします」

「あ、ああ」


両手を合わせて
しっかりとお辞儀をする名無し。

今から戦うというのに
挨拶をするという行為に
少しばかり疑問にかんじたが
彼女なりの暗殺の礼儀なのだろう。

暗殺者にもプライドや
やり方というものがある。

プロなら尚更だ。

お辞儀をし終えた名無しの顔つきは
先ほどとは打って変わり
真剣な顔。

表情だけで
人を殺してしまいそうなほど
冷たい顔をしていた。


名無しは烏間に向かって
大きく一歩を踏み込みナイフを逆手に持ち
ボクシングでいうフリッカージャブのような
相手がよけにくい角度から一撃を放つ。

首に向かって放たれたと思われた一撃は
瞬時に肝臓がある場所へと向けられる。

烏間はそれを捌いて防いだが
名無しは即座に
アクロバティックな動きで
烏間の首に回し蹴りをいれる。

少し体制を崩した烏間の足を引っかけ
転んだところを首に腕を回して
締め上げナイフを突きつけた。


この間僅か1秒。


E組の生徒たちは
一体目の前で何が起こったのか
分からなかった。

物凄い速い攻防をしたと思えば
烏間にナイフを突きつけている
名無しの姿がうつる。

どのような攻防が行われたのか
皆目見当もつかないが
とりあえず名無しが烏間から
一本とったことだけは明白だった。

名無しは烏間から離れると
先ほどと同じようにお辞儀をし、
呼ばれるまで座っていた位置に戻った。


「名無しちゃん凄いね!烏間先生から
一人で一本とっちゃうなんて!」


茅野が尊敬の眼差しで名無しをみる。

他のクラスメイトも
名無しの回りに集まり
次々と褒めていった。

名無しにとってそれは
とても不思議な感覚だった。

今まで自分の技を誰かが
褒めてくれたことなんてなかった。

暗殺に必要な技術を身につけても
誰も喜ばない。


けれどこの暗殺教室では違う。

暗殺スキルが高い者を
こんなににも歓迎してくれる。


「ありがとう。あのタコは殺せないけどね」



名無しは心底嬉しそうに笑った。

それを見たE組の面々は
驚いた顔をした。

昨日の自己紹介のとき
誰もが無表情な人だとかんじた名無しが
普通に笑っている。

喜怒哀楽を表に出さない人かと思えば
ちゃんと持っている。

E組の生徒は
名無しと上手く付き合っていけそうだと
確信めいたことを思った。


そんな中、
名無しの笑顔を見て
一人赤面していた生徒がいることを
名無しは知らない。
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