この想いを消して

□赤羽業
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「俺らと同い年で
プロの暗殺者なんていうから
どんな子かと思ったけど
案外普通でよかったよ」

「なにそれ嫌味?」

「褒めてるんだよ」

「そのニヤケ面は褒めてるって
言えないと思うんだけど。
むしろ馬鹿にしてるでしょ」

「名無しちゃんは
ツンケンしてるなぁ。
素直に受け取れないの?」

「カルマくんこそ素直に人を
褒められないの?」


名無しとカルマは
どちらも笑顔を絶やさないが
空気はとても穏やかとは言えない。

二人とも一歩も譲ろうとはしない。


普段ならこんな子供じみた言い合いなんて
しないはずの名無しは
自分の負けん気の意地っ張りさに
驚いていた。

カルマなんて無視して
とっとと帰ればいいのだが
それはそれで負けた気がする。

なぜかはよく分からないが
カルマに負けることは
我慢できなかった。

自分の中のプライドが
コイツに負けたら終わりだと
言っている気がした。


「はあ…私、カルマくんと言い合いを
しているほど暇じゃないから帰るね。
さようなら」

「えー、なに一人だけで帰ろうとしてんの?
一緒に帰ろうよ」


帰ろうとした名無しの手をあっさりと掴み
いけしゃあしゃあと言うカルマ。

その笑顔はただの悪ガキ。

一緒に帰るなんてことをすれば
帰路につくまで
永遠と言い合いをするだろう。

それはめんどくさい。

どうにかしてカルマから手を解こうとするが
やはり男の力に女が勝てるはずもなく…。


カルマと一緒に帰ることになってしまった。
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