この想いを消して

□幕開け
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東京駅━━━…

いよいよ修学旅行の日がやってきた。

当然のごとく
A組からD組まではグリーン車。

E組だけ普通車だ。

ここでも差別の待遇は変わらない。


「学費の用途は成績優秀者に優先される」

「おやおや君達からは
貧乏の香りがしてくるねぇ」


ニヤニヤとE組の生徒をみながら
上から目線で馬鹿にしてくる。

頭はいいのかもしれないが
性格は最悪だ。

名無しはその汚いニヤケ面を
ぶん殴りたい衝動にかられた。

そこに一人の女性が通りかかる。

ヒョウ柄のコートを羽織り
ニット帽を被り
ハリウッドセレブのような格好をした
サングラスの女。


「ごきげんよう生徒達」


そういってE組の生徒の前にやってきたのは
ビッチ先生。

さっきまでE組を馬鹿にしていた
本校舎の奴らも驚きの表情だ。


「フッフッフッ。女を駆使する
暗殺者としては当然の心得よ」


得意げに話すが
どう考えても引率の教師にはみえない。

暗殺者としての心得は別に構わないのだが
ビッチ先生はここではあくまで教師である。

暗殺者としてならダサい格好をしてきて
ターゲットに幻滅させたら
せっかくのチャンスを
逃す危険があるため
オシャレに決めてくるのは分かる。

だが彼女が暗殺者なことは
秘密事項だ。

外人のカルチャーショックだと
思ってくれればいいのだが。


「目立ちすぎだ、着替えろ」

「堅い事言ってんじゃないわよカラスマ‼︎
ガキ共に大人の旅の…」

「脱げ。着替えろ」

「……………」


烏間に言われしぶしぶ着替え直した
ビッチ先生。

そりゃあ、青筋立てて言われれば
誰だって怖い。

しかもあの烏間だ。

より増しで怖い。


電車に乗り込み
ビッチ先生は座席に座り、しくしくと
のの字を書いている。

ああしてみるとなんだか少し
可哀想に思えてくる。


「名無しちゃん。
一緒にトランプしよー」

「ああ、うん」


ビッチ先生を慰めに行こうとしたのだが
カルマに呼ばれ、ただ眺めている
だけになってしまった。

まあ彼女ならアレだけで
心が折れたりしないだろう。

立ち直りは早い方だ。


「そういえば殺せんせーは?」


トランプの最中、
杉野が気がついたように言う。

確かに肝心の殺せんせーがいない。

キョロキョロと辺りを見回すと
窓をみた渚が唐突に驚いた声を上げた。

窓の方を見ると
殺せんせーが必死に電車に張り付いている。


「何で窓に張り付いてんだよ殺せんせー‼︎」

「いやぁ…駅中スウィーツを買ってたら
乗り遅れまして…。次の駅まで
この状態で一緒に行きます」


渚が疑問を投げかけると
なんとも殺せんせーらしい
答えが返ってくる。

保護色にしているから安心だと言うが
服と荷物だけが張り付いて見えるのは
それはそれで不自然だ。
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