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□はば学冬の陣!
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そう、やるからには勝ちに行かねば!






「いざ出陣!」


 勝負開始の合図とともに、私は陣を飛び出す。


「おい!?」


「メモ子さん!?」


 後ろから先輩たちの驚いた声が聞こえたけど、とりあえずスルーの方向で。


 だって先輩たちに同じテンションを求めても多分無駄だし。ここはマイペースに楽しく一人で 


「全力真っ向勝負っっ!!」


「……ホントにバカだな、あいつ。」


「とうとう『体力』まで外れちゃったか……。」


 聞こえませーん。








 とりあえず最短距離で、兄弟の陣を目指す。


 私一人で兄弟と柔道部コンビを相手にするのは不可能だし


 さしあたっては片方ずつ相手をするしかない。


 と、なると。悔いを残さないためには、最強の遊び相手であるルカとコウに挑むのが正解だと思う。


 それに兄弟チームと柔道部チームが、互いに互いを強敵だと思ってるのは間違いない。


 うまくいけば、柔道部の援護を得られるかもしれない。




「そして兄弟を倒した後、返す刀で……っと!」


 計略をめぐらせながら走っていると、早速雪玉が飛んできた。


 どうやら私の他に陣から飛び出してくる人はいないみたいだ。


 まずは陣にこもって雪玉で迎撃するつもりってことか。




 まだ距離があるせいで、雪玉はそれほどのスピードも威力もない。


 スピードを緩めることなく、次々と飛んでくる雪玉をかわしながら走る。


 雪の積もった地面は反力を得にくくて走りづらいけど、なるべく接地時間を短くして。




 向かってくる雪玉が徐々に威力を増す。さすがにそろそろ速度を緩めなければマズイ。


 兄弟の投げてくる雪玉は、かわして落ちた場所で鈍い音を立てて転がる。


 ……え、雪玉ですよね?


「メモ子、当たると危ないよ!」


「おうおう、頑張って避けやがれ!」


 防御壁の向こうから、ルカとコウが玉を投げる手を休めもせずに、すっげぇいい笑顔で声をかけてくる。


「だったらちょっとは手加減してよ!」


「ハハッ!」


「甘えんなバーカ!」


 思わずむくれて言葉を返したけど、ダメだ。楽しそうだ。




 や、私も楽しいよ?


 だけどその雪玉はホント一発でも当たるわけにはいかない!


 軽く不安を覚え、両手に握りしめた雪玉を強く握りしめた。圧力で硬度を増す雪玉。


 全力でかわしながらも、避けた先を狙って飛んでくる雪玉を、持ってた雪玉を投げて撃墜する。


 ぶつかった雪玉ががつん!とありえないほどの音を立ててはじけ飛ぶ。


 まったく、なんてものを投げてくるんだあの二人は!








 ひるんだ私は、あらかじめあちこちに作ってあった防御壁に身を隠す。


 兄弟もだいぶ手持ちの玉数を減らしたらしく、飛んでくる雪玉が止まった。




 ……ふう。


 ほっと息をついて、油断してる場合じゃないと気を引き締める。


 隠れたのはいいけど、ここから出るのが問題だ。


 その瞬間を狙われるのは間違いないし、かと言ってここにいれば相手に雪玉を作る暇を与えてしまう。




 理想としては、この柔道部がこの隙を狙ってくれるとうれしいんだけど。


 都合のいいことを思いながら柔道部の陣へと目を向けたけど、


 そこから二人が出てくる気配も雪玉が飛んでくる気配すらない。




 作戦会議中か、様子見中なのかもしれない。


 これは期待できそうにないな。思い切って飛び出すしかなさそうだ。


 私は次の壁の位置までのルートを頭に描き、思い切って飛び出す。




 予想通り、再び再開する攻撃。


 けどやっぱりまだ玉数が少ないのか、さっきほどは雪も飛んでこない。これはいけるかも!


 好機とみた私は、雪に足をとられそうになりながらスピードをあげて、次の壁へと一直線に走る。




「っ!?」




 と、突然至近距離から雪玉が飛んできた。


 反射的にかわしながら雪玉が飛んできた方向に目をやる。 




「さすがメモ子。あれを避けるとはな。」


「嵐さん!?」


「完全に不意打ちだったのになー。野生動物並みっすね。」


「ニーナまで……」




 そこには、いつの間に陣から出てきたんだろう、嵐さんとニーナの柔道部コンビが雪の壁を背にして立ってた。




「おまえが一直線に陣に向かうことは予想済みだ。桜井兄弟が雪玉減らすのも計算通り。」


「ってことで、ここは大人しく降参しない?メモ子ちゃん。」


「しないっ!」


 どうやら二人の思い通りの行動をとってしまっていたらしい。


 悔しさに唇を噛んだけど、あきらめて降参するなんて選択肢はない。




 私と二人の距離は近い。けどかといってかわせないほどの距離でもない。


 壁から出ればルカとコウの雪玉が飛んでくるから、二人もそうは動けないはず。


 この状況を回避する道は一つ。


 一撃必殺で二人をひるませて、その隙に柔道部の陣に向かって旗を奪うこと。




 私は両手に握った雪玉を握り直し、二人に向き直った。













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