Free

□実は余裕なんてないんです。
1ページ/2ページ


「……で、ここにこの公式をあてはめれば、って聞いてる?弥子ちゃん」
「……えっ!!」
「やっぱ、聞いてなかったか……」
「ごめんなさい」

ネウロに事件に連れ回されてたせいで、中間テストに出れなかった……で、今は追試に向けて、笹塚さんに勉強を教えてもらってるところなんだけど……

私のノートに書き込みをしていく笹塚さんの手に目がいっちゃって……


だって、手首とか、白い手とかすごく綺麗だし……


なんか、こんなにも笹塚さんを意識しちゃうなんて、私笹塚さん大好き人間みたいだよ。

「ご褒美のたこわさ、要らないの?」
「ううっ!!いりますよっ!!」

そんな私の気持ちなんて知らずに、私をからかう貴方。

ズルイですよね。大人って。

いつも、余裕に満ちてて、こんなにもドキドキさせられる私なんて気付いてないだろうし。


それでも、大好きなことには変わりなくって。


本当にズルイ。だけど、だーいすき。


だから、ちょーっとでも認めてもらいたいから、苦手な数学でも、頑張っちゃう。

「出来ました!!」
「どれ……」

笹塚さんは赤ペンを握り、丸をつけていく。

「ん、偉いよ」

頭に優しく温かい感触。

「笹塚さ……」


ノートを見ると、全問正解を表すノート1ページ分の大きな○がハートで記されていた。

「ちょっ……!!これって!!」
「ま……そういうこと」

貴方はいつも余裕に満ちてて、ズルイなんて感じてたけど、ハートで記されてたノートでの告白は不器用な笹塚 衛士さんを見せたんだ。

だったら仕返しなきゃね。

私は満面の笑みで貴方に言葉をプレゼント

「笹塚さん、だーい好き」
「ハイハイ。サンキュー」


実は余裕なんてないんです。僕も君もお互いに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ