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□実は余裕なんてないんです。
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「……で、ここにこの公式をあてはめれば、って聞いてる?弥子ちゃん」
「……えっ!!」
「やっぱ、聞いてなかったか……」
「ごめんなさい」
ネウロに事件に連れ回されてたせいで、中間テストに出れなかった……で、今は追試に向けて、笹塚さんに勉強を教えてもらってるところなんだけど……
私のノートに書き込みをしていく笹塚さんの手に目がいっちゃって……
だって、手首とか、白い手とかすごく綺麗だし……
なんか、こんなにも笹塚さんを意識しちゃうなんて、私笹塚さん大好き人間みたいだよ。
「ご褒美のたこわさ、要らないの?」
「ううっ!!いりますよっ!!」
そんな私の気持ちなんて知らずに、私をからかう貴方。
ズルイですよね。大人って。
いつも、余裕に満ちてて、こんなにもドキドキさせられる私なんて気付いてないだろうし。
それでも、大好きなことには変わりなくって。
本当にズルイ。だけど、だーいすき。
だから、ちょーっとでも認めてもらいたいから、苦手な数学でも、頑張っちゃう。
「出来ました!!」
「どれ……」
笹塚さんは赤ペンを握り、丸をつけていく。
「ん、偉いよ」
頭に優しく温かい感触。
「笹塚さ……」
ノートを見ると、全問正解を表すノート1ページ分の大きな○がハートで記されていた。
「ちょっ……!!これって!!」
「ま……そういうこと」
貴方はいつも余裕に満ちてて、ズルイなんて感じてたけど、ハートで記されてたノートでの告白は不器用な笹塚 衛士さんを見せたんだ。
だったら仕返しなきゃね。
私は満面の笑みで貴方に言葉をプレゼント
「笹塚さん、だーい好き」
「ハイハイ。サンキュー」
実は余裕なんてないんです。僕も君もお互いに。