ツメタイソラ‐stranglehold‐
□九話
2ページ/3ページ
三人は蜜葉に事の次第を手短に説明した。その間、話していたのはほとんど失渦だった。というのも、鏡之丞では話が要領を得ないし、雨は初対面なため中々信用してもらいづらいと思ったからだ。
「そんなことが……。でもまた会えて良かった。お兄ちゃんが生きていてくれて、本当に良かった……」
蜜葉がきゅっと瞼を閉じ噛みしめるように言う。それを見て雨は少し安堵する。鏡之丞はまだ年端も行かない頃に家を出たと聞いていたので、てっきり獣人障害で家族に忌み嫌われているのかと思っていたのだ。
「失渦くん、ありがとう。本当に約束を果たしてくれるなんて」
「約束? なんだそれ」
鏡之丞が失渦と蜜葉を交互に見て訊ねる。すると蜜葉がにこりと嬉しそうに鏡之丞を見る。その端整な顔立ちは鏡之丞と似ているのだが、表情の柔和さは似ても似つかない。
「第4部隊の三人が約束してくれたの。私が協力する代わりに、お兄ちゃんに会わせてって」
「協力って何だよ。蜜葉にヘンな事させてんじゃねえだろうな?」
鏡之丞は鋭い視線をぶつけ失渦に詰め寄るが、蜜葉はそれを制止したしなめる。