ツメタイソラ‐stranglehold‐

□六話
2ページ/35ページ

 すると幾が雨の顔を覗き込んで悪戯っぽい笑みを満面に浮かべる。

「初めて会った時からさ。最初は鏡さまとデキてるかと思ったね」

ニヤリとする幾に、雨は一瞬きょとんと目をしばたたかせたが、すぐに呆れたように小さく笑んだ。

「で、なんで男って偽ってたんだ?」

 二人の向かいに腰を落ち着けた周が、唸るような声で問う。

「私は孤児として拾われた。恩を返すには男として労働するのが一番手っ取り早かった、それだけだ」

消えかかった焚き火に薪をくべながら雨は言うが、それだけでは納得できないと、周は食い下がる。

「でもなんでそれを二年前の取り調べで言わなかった?言えば確実に再捜査の手が加えられて、お前の罪は軽くなったのに!」

 詰め寄る周に、雨は困惑した表情を浮かべる。

「さっきからなぜ女なら罪が軽くなると言い切れるんだ。何を根拠に?」

 雨はなぜだかひどく動揺した様子だったが、周は構わず先を進める。

「覚えてるか?事件の夜、お前が出頭してすぐ雨が降ったのを。そのお陰でお前が火を放った事件現場の屋敷、二階だけ辛うじて全焼を免れたんだ」

雨の瞳が微かに揺らいだ。

「二階にあった遺体もほとんど綺麗に焼け残っていた。その身体に残ってたんだよ、お」

「やめろ!!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ