ツメタイソラ‐stranglehold‐
□六話
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すると幾が雨の顔を覗き込んで悪戯っぽい笑みを満面に浮かべる。
「初めて会った時からさ。最初は鏡さまとデキてるかと思ったね」
ニヤリとする幾に、雨は一瞬きょとんと目をしばたたかせたが、すぐに呆れたように小さく笑んだ。
「で、なんで男って偽ってたんだ?」
二人の向かいに腰を落ち着けた周が、唸るような声で問う。
「私は孤児として拾われた。恩を返すには男として労働するのが一番手っ取り早かった、それだけだ」
消えかかった焚き火に薪をくべながら雨は言うが、それだけでは納得できないと、周は食い下がる。
「でもなんでそれを二年前の取り調べで言わなかった?言えば確実に再捜査の手が加えられて、お前の罪は軽くなったのに!」
詰め寄る周に、雨は困惑した表情を浮かべる。
「さっきからなぜ女なら罪が軽くなると言い切れるんだ。何を根拠に?」
雨はなぜだかひどく動揺した様子だったが、周は構わず先を進める。
「覚えてるか?事件の夜、お前が出頭してすぐ雨が降ったのを。そのお陰でお前が火を放った事件現場の屋敷、二階だけ辛うじて全焼を免れたんだ」
雨の瞳が微かに揺らいだ。
「二階にあった遺体もほとんど綺麗に焼け残っていた。その身体に残ってたんだよ、お」
「やめろ!!」