ツメタイソラ‐stranglehold‐
□一話
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この三人の男達は、いわゆる野盗である。少し前からこの森を根城にして、近くを通る旅人を森の奥深くへ誘っては、襲撃して金品を強奪していた。
そして昨日の暮れ方、道を尋ねてきたジープに乗った旅人にこの場所で野宿するよう勧め、夜も更け日付も変わったまさに今、夜襲をかけようという算段だったのだ。
「しかし、見張りもなしにこうも熟睡されてると殺し甲斐がないな。」
サングラスの男が腕組みをしながらわざとらしくため息をついた。すると口ピアスの男が、顎をさすりながら旅人二人を交互に見つめて口を開いた。
「…こいつら殺さないで売るってのもありだな。二人共軍服みたいな厳つい服着てる割にすげぇ顔いいぜ。」
そう言われ三人で目の前の人間の顔を覗き込む。
起きる気配の無い旅人二人、一人はジープに背中を預け、座って腕組みをした姿勢のまま頭をもたげている。整った顔で、長い黒髪は腰までありそうだが、その体つきははっきり男であることを示している。
もう一人は、焚き火の跡であろう木炭に添い寝するように横たわっていた。華奢な体躯に少年とも少女とも取れる顔立ちで、長いまつげが白い頬に影を落としている。
「…確かに良い値が付きそうだな。」
金髪の男が、喉を鳴らしニヤリとしながらベルトに差したナイフに手をかけた、その時。