ツメタイソラ‐stranglehold‐
□六話
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「取り乱しました、本当にごめんなさい!びっくりしたよね?」
正座で手を付いて謝る幾の前には、仁王立ちで恨めしげな目を向ける周と苦々しい顔の雨。
雨の説き伏せで周に対する誤解が解けた幾は、姿形もスルスルと元に修まった今、ひたすら平謝りするのだった。
「もう体の調子はいいのか」
シャツを着直した雨が幾の前に屈み尋ねる。
「火にあたって寝てたから大分良くなったよ、お陰さまでね」
眉尻を下げて情けない顔で笑む幾。そんな穏やかな二人の会話に納得がいかないとでもばかりに、周は目を閉じて頭を横に振った。
「秘密主義が悪いとは言わねえけどさ、疑問が謎のままで終わんの俺大っ嫌いなんだよね」
だから手品なんかも見ない、と真顔で断言する周。
その言葉に、雨はその場にストンと胡座をかいて座り、頬杖をついて喋る。
「私は性別のことを隠していたつもりはない」
すると幾が雨の隣に腰を下ろし、非難するような目で雨を見る。
「ウソつき」
以外な所から声が上がり、雨は少し目を見開く。
「でも言わずともお前は気付いていたんだろう。いつからだ?」
雨はきゅっと眉を寄せて、少し宥めるように言う。