ツメタイソラ‐stranglehold‐

□五話
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 人の生は百二十年と言われる。
その長いような短いような括りの中で、重力や引力などの災害でもない自然の摂理の類いを恨めしく思う機会など、滅多に無いだろう。
しかし今、三人の思いは一つだった。

「重いー!痛いったら!指が食い込んでるからそんな強くしがみつかないで!?」

「無理言うなよ、力抜いたら落ちる!」

「……」

 崖に飛び出してしまった雨と周は、大きな鳥のような翼を生やして飛んできた幾を放すまいと、前から後ろからがっちりとしがみついていた。
幾は背に付いた翼を羽ばたかせ、落下していく身体を必死に食い止めるが、何せ自分も含め三人分の重量を一手に負っているのだ。今にも身体中のあちこちから骨の軋む音が聞こえてきそうな程、大きな負荷を感じていた。


「なあ花辺、これってさ、魔法じゃないよな」

 突然、少し質すような口調で周が言う。
世界に魔法と名の付くものは存在すれど、それは決して荒唐無稽な利便性に富んだ、夢の具現化能力ではなかった。
テレパシーやら時空間移動もできなければ、病気の治癒なんかも不可能。瞬時に翼をくっつけて空を飛ぶなど以ての外なのである。
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