ツメタイソラ‐stranglehold‐
□二話
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「くはーっ、空きっ腹にアルコールが染み渡るぜ!」
ダンッと豪快かつ軽快にテーブルにジョッキを叩き付ける長髪の男、鏡之丞である。その顔は至福に満ちていた。
あれから、雨たち一行は森を抜けてしばらく車を走らせた所で、この街にたどり着いた。
雨の盗品……もとい戦利品は、銃が最新モデルだった事などから、思いの外高く売れた。それを他の二人が見逃すはずがなく、散々雨に縋り付いた結果、こうして酒場で一杯引っかけている、というわけだ。
「……言っとくが、その一杯だけだからな」
分厚いステーキを口に運びながら雨が言う。雨が好んで酒を飲むことはない。
「先言えよ!もっと味わって飲んだのに!」
叫ぶ鏡之丞のジョッキは既にほぼ空だった。
「いつもの事じゃないか。鏡さまってば学習しようね」
そう言う幾のグラスには、まだまだ7割程の酒が残っている。
「それより雨、何か買うものでもあるのかい?」
幾が、こっそり伸びてきていた鏡之丞の手から自分のグラスを取り上げながら言う。
「ああ、最近怠っていた銃の手入れの道具で……」
「ふーん」
「興味がないなら初めから聞くな」
幾は既にその辺の紙に落書きを始めていた。