ツメタイソラ‐stranglehold‐
□一話
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────男が三人。
風も、虫の声も、木の葉の擦れる音すらも無い、無数の木々が静かに佇む森で確認できるのは、潜められた三つの足音と、時折嘲笑とも取れる笑いの混じった、押し殺された話し声だけ。
「こっちの方だよな」
三人の内の一人、金髪の男が腰のベルトをさすりながら連れの二人に問いかけた。
「ああ。この森で開けた場所があるのは一ヶ所だけだからな、この辺で野宿してる筈だ。」
サングラスの男がニヤけた顔で答える。
「シッ!あそこのジープじゃねえか?」
口にピアスをした男が、突然人差し指を口に当てて先の二人の会話を遮った。
彼らが見やった視線の先には、生い茂る木立の中にぽっかりと空いた空間。そこにはジープが一台と、寝息をたてている二つの人影が、木々の隙間から差し込む月明かりに照らされていた。
「ははっ!間違いない、昼間俺達が目を付けた旅人だ」
金髪の男がお目当ての獲物を見付けて笑みを浮かべる。