駄文

□いつもこんなに近くに
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「…あれ、獄寺君、もしかして体調悪い?」
「……あー、ほんのちょっとだけ熱、あるかもです。いや、多分気のせいなんで大丈夫っす!」


ほんのちょっと、にしては声の様子がおかしすぎる。これは絶対風邪を引いている、とツナは確信した。
玄関を開けて外にとびたせば凄く寒くて、胸の奥がきゅっと締め付けられる気がした。
(獄寺君の、いじっぱり)




いつもこんなに近くに





一人暮らしの家にどうせ風邪薬は無いだろうし、獄寺は大人しく病院に行くような人間に見えないから、とツナは困ったように苦笑いした。
様子を見に来た正当な理由を探すかのように、頭の中を駆け抜ける。

チャイムを押しても反応の無い玄関を開けて、勝手に入ってもらって構わないといつも獄寺が言っていることを思い出す。
本当はそんなことしてはいけないと思うのに、心配に思う気持ちの方が強くて。思い切って部屋に足を踏み入れる。



がらんとした殺風景な部屋の中に置かれた広いベッドの上で、獄寺はだらり、と横たわっていた。
額に触れてみればやはり熱くて、余程熱が高いんだなとツナは思う。

とりあえず熱を下げなきゃと、額にそっと濡れタオルを置いた。
冷たかったはずのタオルは獄寺の熱を吸って、すぐに温くなってしまう。
またタオルを冷やして、額に置く。それを3回繰り返したところで獄寺の眉がぴくり、と動いた。
(起こし…ちゃった)



「獄寺……くん」
大丈夫?と恐る恐る声をかけてみれば、獄寺の目は大きく見開かれる。

「じゅーだい、め?」

とろん、とした風邪引きの目で、獄寺はツナを見つめた。

「獄寺君さ、大丈夫だなんて嘘でしょ。おでこ、すごく熱いよ」

「……すみません」

思わず口調がキツくなったツナの言葉を聞いて、獄寺はさらにだるそうに呟いた。
ツナははっとして、起き上がろうとした獄寺を制して再び横たわらせる。

「こういう時くらいは、頼ってよ」
オレだって看病くらいできる、とツナは寂しそうに言う。
看病方法なんてあまり知らないけれど、薬を買ってくることくらいはできるのに。
(オレ、そこまで頼りないかな)



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ばかばかばか!
(でも、すきなんだなぁ)

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