駄文

□きらきらふわり -いち-
1ページ/2ページ




「獄寺君、ほら見てしゃぼん玉できた」

「10代目はしゃぼん玉を作るのもお上手なんすね、さすがです!」


馬鹿みたいに真面目に、眩しく優しい笑顔で言葉を返す獄寺。その視線は真剣にしゃぼん玉を追いかけていて。しゃぼん玉を見る横顔もやっぱり綺麗で、なんだか悔しくなる。
そしてそれは彼の銀髪に触れてぱちりと割れた。






――きらきらふわり――







何度も二人でお風呂に入っているが、やっぱり緊張する。
リボーンが思いついた突然の特訓のせいで、頭の先から足の指まで泥だらけになってしまって。
お風呂、一緒に入ろうよ?なんてふざけて言ってみたら。予想以上に嬉しそうな様子になっちゃって、冗談だなんて言えなかった。なんだかすごく嬉しそうな表情をこちらに向けているから。

二人でお風呂に入るときは、泡風呂か入浴剤を入れることにしている。透明なお湯じゃ、お互いに凄く恥ずかしくなってしまって。


綱吉は獄寺にも見えるように、しゃぼん玉作りを始めた。両手を輪にして水面に浮かぶ泡に浸すと、ゆっくり持ち上げる。きらきら歪んだ世界が膜に映って、空気の揺れと共にたわむ。
ふう とゆっくり息を吹き込むと薄いしゃぼんの膜が軋んでやがて丸くなる。そしてそれは徐々に指先から離れて、暖かな空気の中にふわりと舞うように飛んだ。
きらきらして綺麗だな、と思った。綱吉が最後にしゃぼん玉をしたのは多分幼稚園位で、なんだか凄く久しぶりに見た気がした。


しゃぼん玉がぱちっと割れたのを見届けて、綱吉は正面に視線を戻した。エメラルドグリーンの瞳にじっと見つめられていたことに気づいて急に恥ずかしくなる。

「獄寺君はさ、小さい頃しゃぼん玉してた?俺、しゃぼん玉好きだったからさ」

「いえ、そういうのはあまりやんなかったです。……そういう柄でも無いんで」


どきどきするような視線が気になって、適当に話を振ってごまかそうとした。だが視線は逸らされることなどあるはずもなく、さらに集中したものに変わる。
顔が赤くなっていくのが、自分でも解る。

「獄寺君もしゃぼん玉やりなよ、すごく楽しいしほら」
顔の赤さがバレないように、獄寺に背を向けた。綺麗な顔が近くにあるとどきどきして、どうにもごまかすことが出来ない。声も少しだけ震えてしまって、恥ずかしさが増す。既に気づかれているかもしれないけれど。


「……10代目」
ふっ、と笑った声がした。途端、首に小さな痛みが走る。獄寺の柔らかな唇が、首筋の薄い皮膚に噛みつくように。


「……っ、やだ………」
「可愛いです、すげえ綺麗できらきらして。しゃぼん玉みたいで」
「可愛く、ないってば……っあ」

ちゅっ、と音を立てて唇が吸い付く。離れたと思えば、舌先は耳朶に触れていて。ゆっくり耳を食むように撫でる。

「いいえ、世界一可愛くてお綺麗です」
「っや、綺麗じゃないし……やめ、てよ、やだってば」

恥ずかしくてむずがゆくて、手足をばたつかせて抱きしめている腕から逃れようとする。


「…俺に触れられるの、そんなにお嫌ですか」
獄寺の声が、ふいに寂しげなものになる。綱吉の肩に込める力を強くして、向かい合わせになるように綱吉を振り返らせる。





.

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ