駄文

□暗い世界に、灯りは無くて
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ふわり、とTシャツが肌から持ち上がって、白い柔らかな色の腹が隙間から覗く。楽しそうに笑うその人は、眩しすぎる笑顔を溢してこちらを向いた。
愛らしい唇をふわりと広げて、「ごくでらくん」と柔らかく呼ぶ。
愛しい人の言葉を聞いて、胸がきゅっとなる。声に誘われるかのように駆け寄ろうとしたら、その声の主はすうっと消えていた。
抱きしめるために伸ばした腕が虚空を掻く。あまりに突然のことで、思考が追いつくはずもなく。

それが何故かは、ほんの少しの間に解ってしまったのだけれども。






「……ち、くしょう」
抱きしめることが、できなかった。伸ばした指先にいるはずの綱吉がいつの間にか消えてしまうなんて。夢だと解りつつも悔しい。


この気持ちは恋なのではないか、と思った日からこんな夢ばかり見てしまう。抱きしめたり、キスしたり。場合によってはそれ以上も。
夢の中だけで彼を汚して、現実にそれを叶えることはせず。愛情表現なんて出来やしない。


こんなに愛しいのに、こんなにも好きで好きで堪らないというのに。想いは表されることなく、募るばかりでどうしようもない。

彼は強大な力を持つボンゴレの10代目で、かけがえのない御人。命の恩人であり、一生を共にすることを決めた大切な主。
しかし俺はただの右腕で。命令されたことに忠実に従うことしか許されないただの部下。一人だけ愛してくれるなんてあるわけが無いのだ。


ちらちらと、綱吉の表情が頭に浮かぶ。愛らしい仕草と朗らかな笑い声に、胸が締め付けられるように苦しくなる。



今日も脳内で彼を犯す、そして彼を滅茶苦茶に汚す。



これを知られたら、嫌われてしまうだろう。右腕どころかボンゴレにもいられなくなるかもしれない。
好きだなんて思うことすら、罪かも知れない。

目を閉じる。
唇でそっと彼の細い首筋に触れることを考える。甘い夢に逃げるしか、この思いの行く先は無いのだと。








ああ、誰より何より貴方が好きです。
貴方が俺をどう思っていようとも、




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