短編2

□邂逅
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重い……誰だ…?

「かぐ…ら?」

ぼんやりとした視界に映った色に怪力娘が起こしに来たのかと思ったのだが。

「あんな弱い妹と間違えるなんてお侍さん酷いなぁ」

その声音に、自分をお侍さんと呼ぶ神楽に似た人間、いや、天人。

「神威…!ぐっ…」

気付いた途端に眠気など吹っ飛んで起き上がろうとしたが両手を捕まれ布団に押し戻されてしまった。そう言えば自分は風邪を引いて寝ていたのだったか。この体勢は、まずい。

「離せ…」
「嫌だね。あ、勿論叫んで助けを呼ぶのも駄目だよ。そしたら来た奴全員殺っちゃうから」

趣味の悪い笑みを満面に浮かべて自分を見下ろしてくるこいつの目的はなんだ?意図の読めない表情に嫌な予感ばかりがつのる。

「……殺しに来たのか?」

投げ遣りにそう尋ねれば虚を突かれたように一瞬ぽかんとし、そして笑い出した。

「あははっお兄さんを殺すのはまだだよ。もっと強くなってもらわなきゃ。これじゃ首をちょこっと締めるだけでお兄さん死んじゃうじゃない」

今日は様子を見に来ただけだよ。どうやら具合も悪いみたいだし、と笑えば無言で身体を舐め回すように見てくる。

「なんだよ…」

その視線に耐えられなくて無駄だと分かりつつも抵抗の意志を見せながら睨み付けた。

「お兄さんこの前春雨の奴ら、しかも辰羅と戦ったんだって?相変わらず面倒事に首を突っ込んでるみたいだね」

ほらここ、と目を細めて鎖骨に残る微かな傷痕に舌を這わせる。

「っ……やめろ…!気持ち悪ィ!」
「あれ?お兄さん意外と敏感なんだ。苛めがいがあるなぁ」

ヤバい。本当にヤバい。命の危険とかじゃなくてもっと別の。

「……そんなに見つめられると我慢出来なくなっちゃうな」
「っ違…!」
「顔真っ赤にしちゃって今日のお兄さん可愛い…」
「んっ……!」

いきなり唇を塞がれて思わず目を見開く。苦しい、視界がぐるぐる回る。風邪のせいか身体の熱もどんどん上がる。

「……ん゙…ん、…………………」
「……あれ?お兄さん本当に大丈夫?」
「…っ……はっ…」

声が出ない。呼吸をするのに精一杯で思考も何も働かない。神威が何か言っていた気がするがそれも全く理解出来なかった。

やべ…意識が…

遠退く意識の中で神威の笑い声だけが聞こえた。


─────


「…ぎ……ちゃ……銀ちゃん!」
「あ………?」
「銀ちゃん!大丈夫アルか?何もされてないアルか?買い物から帰ったらあの馬鹿兄貴がいて銀ちゃんに……!」

そうだ神威、あいつが確か……

「そのお前の馬鹿兄貴は何処に行った?」
「私に気付くと窓から出てったヨ」
「そうか……助けてくれてありがとな。俺は大丈夫だ」

何もされてないのなら気を失ってまだそう時間は経っていないのだろう、と思っていたのだが。



「あいつ性格悪ィ……」

夜風呂に入ろうと服を脱いだ所で気付いた身体中に散らばる所有印。神威の独占欲がそこに顕著に表れていて思わず深いため息だけが口を突いて出てしまった。



end.
──────

もう少し長く新八とかも入れて書くつもりでしたが眠気に襲われて限界でした。これ私の初威銀ですかね?中途半端でごめんなさい。
それでは、


2010.12.30 秋花

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