短編2

□逃避行
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好きだ好きだ好きだ好きだ──…

伝えきれない強い想いは身体の中を駆け巡って、そして足を万事屋へと動かす。通い慣れたはずなのに毎回扉を開く瞬間に緊張するのはどうしてか。この向こうに銀時がいる、それだけで鼓動は早まるのだ。

「おい万事屋。いるか?」

気配で居ることは分かっているのに一々確かめるのは話し掛ける為のきっかけだったりする。精一杯に強がって普段通りの自分を見せようとするのもこの好意を隠すため。

「おー土方くん。今日は何?」
「いや、特に用は……」

なのに一言会話を交わすだけで化けの皮は簡単に剥がれ落ちてしまう。

「ま、取り敢えずここに座れば?」

自分の左隣をぽんぽんと叩いて促す銀時の声に足は自然と動き出す。すとん、と腰を下ろせば途端に肩を抱かれた。

「……っ!」
「緊張してんの?」

反論したいのに口は無意味な動きを繰り返すだけで確かな音は生み出さない。好きだ、好きなんだ─もう我慢なんて出来なくて体内で暴れる強い想いを必死に目で訴えた。

「んなに見つめられると照れるじゃねぇか」

少し赤くなった銀時にざまぁ見ろと笑ってやろうと思ったのに。

「それじゃ仕返しに銀さんは遠慮なく十四郎を頂きます」
「なっ!」

耳元で名前を呼ばれ背筋を何かが駆け上がる。近づく銀時の顔を押し退けることも出来なくて思わず目を瞑った。しかし予想していた感触は違う所に。

「く、首っ」
「そうだけど何?口が良かった?」

ごめんごめん、じゃぁやり直すから、なんて言って再び迫る顔を今度は何とか押し退けた。

「べ、別にそういうわけじゃ!」
「そう?」

意外に簡単に引き下がった銀時にほんの少し物寂しさを感じる。未だにキス以上は、したことがない。付き合うことになった時点で色々と覚悟はしていたというのに一見手が早そうな銀時は予想外に慎重だった。

「土方、何時までここにいれんの?」

いつの間にか髪を弄られながら悶々と考えていたら見回りの予定時間をとうに超えてしまっている。

「やべ…!帰る!」
「おーおー副長さんは忙しいねぇ。気ぃつけて帰れよ」
「あぁ!それじゃな!」

ほぼ毎日仕事の間にこうして万事屋を訪れ、銀時への想いは募る一方。今度非番が取れたら絶対万事屋に泊まりに行こう、もう我慢なんて出来ない。


───…


屯所へ向かって走る姿を玄関から見届ける。さっきの土方の顔を思い出すとつい笑みがこぼれた。

あと、ちょっとかな…

「早くおいで十四郎」



end.


衝動的に書きたくなったありきたりな銀土。常に読んではいましたが書くのはかなり久しぶり。そもそもこのサイトに銀土需要はあるんでしょうか。別に無くても泣かないもんね!

ちょっぴり解説しますと銀時は土方の方から求めてほしくて敢えて焦らしてます。脳内では土方にベタベタです。ドS?っていうか性格悪い(笑)土方は純粋なので「銀時は俺を大事にしてくれてるんだ」なんて思っててほしい。でも焦らされすぎて銀時の計画にまんまとハマる土方萌え。
表向きは銀→←←←土ですが実際は銀→←土です。二人の想いの強さは同じです。寧ろ銀時の束縛力が半端ないと思います。

……なんて誰も聞いてない事をつらつら語ってすみません。ここらで自重します。

久しぶりの銀土めっさ楽しかった^^


2010.12.15 秋花

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