連載

□末の露、本の雫 十四章
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陶器の欠片は老人に

鋭利な牙は幼子に

余りの全てを弱者に



末の露、本の雫 十四章


バァァァァン!!

鼓膜を突き破るような爆発音に土方は思わず耳を塞ぐ。通りは既に叫び声で溢れ返っており、逃げ惑う人々が錯綜していたその中を逆流し現場へと走る。人混みをかき分けたその先に煙が立ち上っているのが見えた。

『…ひ、た……土方、さん!』
ガガッと言う電子音に混じり沖田の声が無線から響いた。

「爆発だ!場所はかぶき町、隊士まとめてすぐ現場へ来い!」
『無事でしたかィ。残念でさァ』
「んだと!?いいから早く、」
『はいはい分かってやす。それより眼鏡とチャイナが桂を探しに行くってんでさっきそっちの方に出ていったばかりなんでさァ』
「何だと!?」
『まだそんなに時間は経ってないんで大丈夫だとは思いやすが一応』
「わかった。見つけたら保護しておく。あと山崎をここへ真っ先によこせ」
『りょーかい』

現場へ到着した土方はまず目立つであろう赤いチャイナ服を探したが見当たらない。最悪の結果は避けたと安堵の息を吐くと被害の程度を検証し始めた。
それから数分後到着した山崎に怪我人を任せ、土方は辺りを見回した。爆発は道のど真ん中のようで両脇の家が同様に四五軒倒壊している。しかし爆発物が道の中心に置かれていたとは考えにくく、土方は頭を捻った。

道の真ん中に一体何があったんだ……?

白昼堂々と誰にも気付かれず爆発物を設置することは不可能。何かに擬態させていたなら或いは、とも考えたがそもそも道の真ん中に何かが置かれていること自体不自然だった。

「副長!!この方が爆発の瞬間を見たと…!」
「何?」

山崎の方へ駆け寄れば所々から血を流した中年男性が地面に横たわっていた。

「分かる範囲でいい。何が起こった?」
「い…きなり、です。そこで…ばく…つ…起こ、て……」
「道の真ん中に爆発物があったはずだ…それは?」
「…何も」
「どういう意味だ」
「道には……に、も、置かれ、て…ませ…」
「何だと?」
「空から…ゆ、くり箱…が」

それを聞いた瞬間土方は空を見上げる。青空を台無しにするかのように天人の船がそこには飛び交っていた。

「くそ……」

天人が船からパラシュートか何かに結んだ爆弾を落としたのだろう。地面に当たった衝撃で爆発するように。恐らく誰もその船を見てなどいない。もし居たとしても証拠がないと言われればそれまで。人間と天人の間に確実に存在する格差が恨めしく思えて仕方なかった。

「山崎、犯人はあいつらだと思うか…?」
「分かりません…でも可能性は高いかと」
「………………」

遠くから聞こえてくる騒がしいサイレンに隊士が来たことを確認した土方は現場に背を向けた。

「どこに行くんです?」
「ガキ共を探すついでに辺りを探ってくる。現場の指揮は総悟に任せた。」
「わかりました。お気をつけて」

懐から煙草を取り出しながら土方は路地裏に足を踏み入れた。



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