連載

□末の露、本の雫 九章
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「トシ……大丈夫か…?」
「あぁ…」


松平の所から帰る車の中、土方は終始無言だった。
銀時を連れ去ったのは白夷族ではないだろうか。確証もない中、その考えが頭の中に浮かんでは消える。

その理由は松平との会話の中にあった。





「とっつぁん、白夷族の情報を教えてはくれねぇか…?」

開口一番そう尋ねて来た土方に松平は眉間に皺を寄せる。

「何を急に……ついにあいつら何か起こしやがったか?おじさんまだこの仕事辞めるわけにはいかねぇんだけど…?」

軽くあしらったつもりだったが土方は目線を逸らさない。近藤や沖田も同様なのを目にして、思わずため息をついた。

「…白夷族、やっぱり何かあるのか?」
「証拠はまだねぇ…だが必ずしっぽを掴んでやる…」
「そうか……」

しょうがねぇ奴らだ、と愚痴を溢しながらも松平は口を開いた。

「最近奴らに強力な仲間が加わったという噂がある…」
「強力な、仲間…?」

元々戦闘種族である白夷族、そんな彼等の中でも飛び抜けて強い奴が更に仲間になったという。土方には嫌な予感があった。

「天導衆の奴らもてこずってるようだ…まぁ、そこら辺はおじさん有難いんだけど」
「その仲間になった奴の情報は?」
「知らねぇ…白夷族なんだからどうせ銀髪に色白、暖色の瞳だろうがなぁ…」



「銀髪、色白……瞳……」

土方はボソボソと呟く。以前護衛した時は仮面のせいで顔が見えなかった。だが銀時も……銀時も全て一致する。

「何で今になって仲間が増えたんですかィ?地球に白夷族がいたんですかねぇ?」
「さぁな…」



─────────*



「………………」

新たな仲間。しかもかなりの強敵。居なくなった銀時……何が起こっているのだろう。

土方は混乱する頭をどうにか静めようと車内から流れ行くかぶき町の町を眺めていた。浮かぶ月が霞む程のネオンが輝く町並みに、白夷族の企みなど知る由もない住民は普段通り、何ら変わりのない生活を送っている。これが近いうちに悲鳴が飛び交う惨劇の舞台へと変わるのだろうか。そんな事をつい考えてしまう。

「俺も弱くなったもんだ……」

自分にしか聞こえない程の小さな声で呟いた時、かぶき町を走る見慣れた姿を見つけた。

「おい総悟、車止めろ」

珍しく素直に言うことを聞いた沖田はその場に車を止める。

「何ですかィ?」
「誰かいたのか?」

窓を開け顔を出した土方は横を通りすぎようとしていたそいつを呼び止めた。

「おい眼鏡!!こんな時間に何をそんなに急いでんだ?」

呼び止められた眼鏡、新八は土方に気付くと慌ててパトカーの窓に齧り付く。

「土方さんちょうど良かった!僕銀さんの事で皆さんに伝え忘れてたこと思い出して…」
「何か有力な情報でもあるのかィ?」
「今はどんな情報でも欲しいところだ!!新八君!教えてくれないか?」
「あ、はい。あのですね…」
「ちょっと待て、ここは何かと不便だ。屯所に向かいながら話を聞く、乗れ」
「わ、分かりました!!」

新八が後部座席に乗り込むと車は屯所に向かって再び走り出す。

「それで?」

銀時の情報とあればどんな些細な事でも知っておきたい。土方は急かすように尋ねた。

「…数日前なんですけど、変な人に銀さん何処かに連れていかれたんです」
「何!!!?」
「僕も神楽ちゃんも心配したんですけど…、大丈夫だって銀さん言ってたしそれに夜にはちゃんと帰って来たんであまり気にしてなかったんです。でも…」

そこで言葉を濁した新八に近藤が先を促す。

「何かあったのか?」
「その次の日から部屋に閉じこもってしまって…」
「その旦那を連れ出した輩ってのはどんな奴だったんでィ?」
「よく覚えてないんですけど…銀髪だったと…」
「「「───!!!」」」

三人は同じ結論に至り、それを代表して土方が新八に問う。

「眼の色は?紅や黄色…明るい色じゃなかったか?」
「眼…すいません、覚えてないです」
「そうか…ならいい」

それっきり口を閉ざし考え込む土方に新八は何かを感じ尋ねた。

「あの……何か分かったんですか…?」
「いや…特に…」
「白夷族でさァ…」
「っ総悟!!」

自分たちが辿り着いた最悪の結論を教えようとする沖田を土方は制する。

「土方さん、こいつらは旦那の家族ですぜ?知る権利があるってもんでさァ…」
「総悟の言う通りだ…隠し通すのは無理だ。それなら教えるのは早いに越したことはない」
「土方さん!!僕知りたいです!!」
「……仕方ねぇ。おい眼鏡、チャイナ娘も屯所に呼べ。」
「分かりました…」



ただならぬ予感を感じた新八は銀時の無事をより一層願わずにはいられなかった。


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