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□末の露、本の雫 四章
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嘘だ……



俺は人間───





末の露、本の雫 四章



衝撃の余り言葉を失う銀時を白夷族は見つめる。それは何処か反応を観察しているかのようでもあった。


「俺が…白夷族………?」

「そうだ。」

「我々白夷族は皆、銀髪。一見人間にも見えるが戦闘能力に於いては夜兎をも凌ぐ。人間なんかと一緒にして貰っては困る」

「…俺をどうするつもりだ」

銀時は警戒心を強める。

「お前等の言う通りかもしれねぇ……だが俺は仲間になんかならねぇよ。」

そう言う銀時の目には強い意志が表れていた。

「ふっ……だがお前は自分が天人だと知った今、この江戸で暮らして行けるのか?我々天人は人間にとって恐怖の対象にしかならない。今までの人生に於いてもお前はその銀髪の所為で苦労したんじゃないのか?」

紅眼の白夷族が怪しげに笑う。

「……………」


確かにそうだ
これまでの人生、この銀髪の所為でどれ程辛い思いをしたことだろう

自分は何故こんな身なりをしているのだろう?
どうして黒髪じゃないのだろう?

皆と違うこの髪と目がずっと嫌いだった。

記憶にない親を怨んだりもした。


「それでもお前はあの子供達の元へ帰るのか?」

「──っ!!!」


新八、神楽───

あいつらは俺が天人で、しかも江戸を侵略しようとしている白夷族だと知ったらどうするだろう。

やはり怖がるだろうか。

神楽に至っては尚更──



「………何を悩む必要がある。白夷族は戦を求め、血を好む、白夜叉、お前だってそうだろう?」

「ちが──…っ!!!」

銀時には否定出来なかった。攘夷戦争に参加していた頃の自分。あれは確実に血を求めていた。
“白夜叉”はまだ消え去っていない。未だに体の中で息を潜め時が来るのを待っているのだ。


「いくら否定しようともお前はいずれ自分の中の獣を抑えきれなくなる」

「殺戮衝動に駆られ気付けば大切な人を殺していた──そんな事になってもいいのか?」


銀時を囲む白夷族はジリジリとにじみ寄る。自然に後退りする銀時は気付けば壁ぎわに追い詰められていた。

「我々の仲間になれ、白夜叉。」

「そして江戸を戦場にし、共に惨劇の当事者となろうではないか」

「いや、だ………俺は─…!」

銀時が否定の言葉を口にしようとした時。目の前に仮面が突き付けられた。

「受け取れ、これが白夷族である証だ。拒否する事は許さん」

周りを見渡せばいつの間にか全員が仮面を付けている。すると突然銀時の両手が掴まれた。


「……!!離せ!」

身動きの取れない銀時に一人の白夷族が仮面を持って近づく。そしてその仮面がゆっくりと銀時の顔に付けられた。

「やめろぉぉぉぉぉ!!!」

「!!!?」


銀時は自分を押さえていた白夷族を振り払い、木刀で叩きのめしながら部屋から逃げ出した。

「お、追え!!!!白夜叉を逃がすな!」

「追わなくていい。」


その時奥から一人の白夷族が表れた。


「しかし──…」

「白夜叉は必ず再びここに来る。仮面を持って──な」

「夜脅様──」

夜脅と呼ばれた白夷族の長は静かに仮面を外した。


「限界まで己の血に逆らい続けるが良い──…坂田銀時」


夜脅の目は紅く、怪しく光っていた。




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