頂き物

□悪神の彷徨
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ジリリリリン…

ジリリリリン…


銀時以外誰もいない万事屋に、電話のベルが鳴り響く。



ジリリ…


「はいもしもし。万事屋銀ちゃんでーす。」


『銀時…』


「土方!?」


思わず叫ぶ銀時。

電話に出てから気づく。



うわ……
俺スッゲェ鼻声…



「…なっ…何?急に。」


なんとか誤魔化したつもりだが、やっぱり鼻声は治らない。

頬を濡らす雫を着物の袖で拭きながら、電話の向こうの土方を思い描く。



やっぱり手放せない。

土方の存在が、俺を大きく変えた。


命を奪う術しか知らなかった俺に、命を愛する術を教えてくれた。





無言の土方に、銀時は小さく呟く。



「…トシ……ありがとう。」


『……なんだ、改まって…。』


電話の向こうの土方は、苦笑しているように感じた。
酷く、胸が締めつけられた。


「別に。なんとなく。」

『……そうか。』


暫く沈黙が続いた。

その沈黙を破ろうと、銀時が口を開きかけたその時。

数瞬早く、土方が切り出した。


『銀時……明日、昼過ぎに屯所来れるか?』

重々しい口調に、何かただならぬものを感じる。

平然を装い、銀時は答える。


「大丈夫だけど…?」


『良かった。隊士には言ってあるから、局長室まで来てくれ。』


「分かった…。」


『それだけだ。じゃーな。』


「うん…。また明日。」


『また…な。』



ツー、ツー、ツー…


ガチャン、と受話器を戻す。






明日の昼。


運命の時は、




確実に近づいて来ていた…







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