頂き物

□悪神の彷徨
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銀時……




なんだか様子がおかしかったな。


確か…

白夜叉の話をしてから……






その時。





「沖田さん、万事屋の旦那の件、どうなりました?」


ひっそりとした山崎の声が、沖田の部屋から聞こえた。




「……旦那……だった。」




悲しい響きを持った沖田の声。


「……嘘…でしょう…?」


山崎の声は引きつり、動揺を隠せない様子だ。



土方は足を止め、部屋に近づくでもなく、気配を消して聞き耳を立てた。



「…白夜叉……あの伝説の正体は…」









坂田銀時。

あの人だったんでィ。















「……な……に…?」


頭の中が真っ白になる。


アイツが?

銀髪で、白い服着てて、色白で、バカ強くて…。

確かに、噂に聞く「白夜叉」と「銀時」には共通点がある。




でも。


認めない。




あんなに綺麗に笑う銀時が。

あんなに綺麗な魂の銀時が。




夜叉と呼ばれるわけがない…。






「総悟…。」


思わず部屋に乗り込んでいた。


「副長っ!?」


驚いた様子で土方を見つめる2人。



「総悟。あんまふざけたことヌカしてると斬るぞ。」

沖田の胸ぐらに掴みかかる土方。


沖田は怯える様子もなく、じっと土方を見据えた。


「…仕方ねぇでしょう……。俺だって認めたくねぇんだ。旦那は違う。そう思いたいでさァ。」


「だったら…!!」


「現実を見ろィ土方!!真選組副長ともあろう人がそんな私情に流されるんですかィ!?」



ピシャリと言い放たれ、ハッとする土方。

ギリ…、と悔しさに歯軋りする。


「でも…でもよ……」






離れたくねぇじゃねーか…


せっかく手に入れた、


あの白銀と。










「とにかく……旦那と分かっちまえば話は簡単でェ。旦那を…」















捕らえやしょう…。
















「……なっ…!?」


驚きに目を見開く土方。
山崎も焦ったように言う。


「でっ…でも沖田さん!?」


「仕方ねーんでィ…もし旦那を幕府に差し出せば、旦那は確実に死刑でしょう…。でも…でも…!!」




もし、旦那を逃がしたとして、それがバレたらどうなるんでィ!?

近藤さんは……俺達真選組は…





「俺は……無駄な犠牲を払いたくないんでさァ!!」


絞り出すような、悲痛な声で沖田は叫んだ。


「俺だって…旦那に死んで欲しくねぇ…出来れば…出来ることなら。逃がしてやりてぇよ…」


だから、組織ってのは動き辛くていけねぇ。




瞳いっぱいにたまった涙を一度拭い、沖田は部屋を飛び出していった。






残された土方と山崎。


ふと、土方が重い口を開く。




「明日、銀時をここに呼ぶ。」


「……え…ふくちょ…!?」



動揺する山崎を尻目に、土方は無言で部屋を出ていった。











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