頂き物

□悪神の彷徨
1ページ/11ページ



その男。







銀色の髪に血を浴び







戦場を駆る姿は



























まさしく夜叉――




















  〜悪神の彷徨〜



















「じゃーな、土方。」


「おう、また来いよ。」



穏やかな昼下がり。


昨日の夕方から、真選組屯所に滞在していた銀時。

土方が仕事をするのを隣で見守り、寄り添いながら過ごしていた。
そんな時、新八から連絡があった。珍しく万事屋に仕事が入ったとのこと。

主が不在だと仕事が出来ないということで、仕方なく銀時は帰ることにしたのだ。




名残惜しそうに手を振り、銀時は屯所を発った。












「副長ー!!」


威勢の良い山崎の声が聞こえ、土方は遠くなっていく銀時の背中から視線を外した。


「なんだ山崎。」

「あ、はい。さっき、お上から連絡があったんですが……」


深刻な顔をした山崎に、自然と土方も話に集中する。








「白夜叉が……」



















「生きているそうです。」





















一瞬頭が混乱した。

アレは、伝説のはずだ。

天人を恐れた人間がつくり出した、架空の人物。


……のはず。




「一応、幕府のほうが目星をつけていまして……」


「……ほう…」



微かに、山崎の目が泳ぐ。




もじもじとなかなか続きを話そうとしない。苛々がつのる土方。


「おい!!さっさと言え!!」


少し声を荒げれば、山崎は怯えたように肩を跳ねさせた。


「…え……と………その…」

「見せろ!!」

痺れを切らした土方は、山崎が手にしていた書類を奪い取る。


「わ…!!副ちょ……」



その時。


「危ないですぜェ〜。」



沖田の、気の抜けたような声が響く。


危険を感じた土方は、咄嗟に身を後退させる。



シャッ、と空を切る音と共に、土方がいた空間に刀が振り下ろされた。


「…チッ……外しちまったィ。」


不服そうに舌打ちする沖田に、土方は顔をひきつらせる。


「てめーコラ総悟。今舌打ちしたろ?つーか俺狙ってただろ?」

「なんでィ土方さん。自意識過剰な人だ。そんなんじゃ、万事屋の旦那に嫌われちまいますぜィ?」


う…と一瞬たじろぐ土方。その隙をつき、沖田は土方の手から書類を奪った。


「白夜叉のほうは俺達一番隊に任せなせェ。ヘタに大人数で動くより、少人数の方が効率がいいですからねィ。」


そう言って、沖田は山崎に目配せする。
ほっと安堵したように、山崎はため息をついた。



結局、土方は一度も書類に目を通すこと無く仕事に戻るのであった。












次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ