A DREAM IN A DAYDREAM

□どうして…
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雨の日は嫌いだ。
外へ出るのが億劫だし、外へ出たら出たで例え傘を差していても濡れる。そして何より寒い。

任務から帰って、その日の内に報告書を書き上げる。私がヴァリアーに入隊してから一度も変えたことのないスタイルだ。雨の日には書きながら寒さでがたがた震えているのだが、そんな時は決まってスクアーロが私に何かを掛けてくれる。
私が雨を嫌いになった理由の一つに、あの温もりをもう感じることができなくなってしまったから、ということがあるかも知れない。

その日は自棄にスクアーロが楽しそうだった。私は、この感じなら今日はあの中学生に負けることはないだろう(もちろん勝つことはよく分かっている)、と確信するものがあった。だから、その日少し体調が悪かった私は、それでも「必ず帰ってきてよね」と見送って部屋で休んでいた。
それきり、私はスクアーロの姿を見ることは無くなってしまった。どうして無理をしてでも見に行かなかったのだろう、と後悔するのはもう既に遅くて。

気がつくと、私の視界はぼんやり曇っていた。涙が零れないようにと目をしばたたかせていると、いつしか頬に流れてしまっていた。それは止めようとしても、雨に唆されて、止(とど)まることを知らなかった。
「スク…ア‥ロ……。‥…嘘…つきッ……。」
『その事』を知った日にも零れなかった涙は、今、次々と溢れては零れた。
「必…ず‥‥帰ってきてって言ったじゃん‥‥。」
「あぁ、聞いたぜぇ‥…。だから帰ってきたじゃねぇかぁ……。」
「!!…スクアーロ!!」
雨の日が、ちょっぴり好きになった。
fin
→あとがき
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