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□あなたの欲しいものはなんですか?―赤月の章―
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客のいない和風な店内で1人の店員らしき若い男が椅子にだらしなく座って暇そうにあくびをする。
男の名は加覧(カラン)。
加覧は肩を越す程まで伸ばした赤髪の上半分を高い位置で漆黒の紐で結び、赤黒いじんべえを着ている。
つり気味で二重の赤みがかかった焦げ茶色の瞳をつまらなさそうに細める。
その視線の先は自分の座るソファーと対になっている細長い机の向こう側に並ぶ金やこの店特有のある時は怪しげな薬、ある時は告白するための勇気など、その他様々なものたちと交換になった商品が飾ってあるショウケース。
加覧の視線は一つ一つの商品を流れるように見つめていく。
その一番上の棚に置いてある南京錠のネックレスで商品を順に見ていた加覧の視線は止まる。
次の瞬間、加覧の思考が自らのそう遠くない過去へと引き寄せられる。
19年分の記憶の中で最も鮮明に映る、摩訶不思議な記憶。
たった、3年半前の記憶…。初めてこの店に来たときの記憶…。