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□泣くなよ、笑え
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錨を下ろして海に流れる穏やかな波に逆らうことなく、サニー号は今日の航海をストップ
錨を下ろすのはいつも決まってゾロで、あたしはその姿を遠目からいつも眺めている
ゾロとあたし以外のクルー達は特別に巨大水槽がある部屋でのディナータイム
何一つ変わらない日なのに、
頬を伝う涙はいったい何だろう?
「お前、飯食いに行かないのか?」
後ろから聞こえた声は紛れも無いゾロの声で、さっきまでいた場所にはもういなかった
お腹は空いていない
おやつに食べ過ぎたケーキがまだ胃に残っている
その代わり、満たされていない何かを象徴するように涙はゆっくりと一粒一粒流れていく
口で返事をすると震える声で泣いているのがばれてしまから振り返ることなく海を眺めたまま首を横に振った
「なんだよ、腹減ってないのか?」
一問一答の返事すら出来ないほど今のあたしには余裕が無いから、後ろにいるゾロに分かるように今度は大げさに首を縦に振る
「んだよ、」
そう言ったゾロの足音が遠ざかることなく近づいてきているのが分かった
来てしまう
何が理由なのか、何が嫌なのか分からないけどばれないようにと腕で目を拭った
それなのに、新しく出てくる涙まで拭うことが出来ずに隣に着てしまったゾロ
頬を伝う涙に気づいたのか、横目で目を見開くゾロの表情が見えたけど、直ぐに表情は戻りあたしと同じ海を見つめた
「やっぱ冬島が近いからか?さみーな。」
「...うん、」
「お、すげぇー。星がいっぱいだな。」
普段ゾロはそんな星のことなんか見向きもしないはず
それなのにこうやって泣くことには触れず、優しく話しかけてくれるのはゾロの優しさなんだと思った
「...うっ、..くっ..ぅ、」
少しは治まったはずの涙がさら量を増して流れ出てきてしまった
「どうしたんだよ、一体、」
さすがのゾロも隣で声を抑えながら泣くあたしを見てみぬ振りはできなかったらしくあたしを見る
わかんない、と答えになっていない答えを言えばふっと小さくため息をついたと同時に、あたしの頭に重みを感じた
それが、ゾロの手だと気づくのは遅くなることはなくワシャワシャと豪快に撫でる温かい手を泣きながら感じていた
「ごめんね...、ゾロ、」
「何がだ?」
「泣いて。」
悪いことじゃねーよ。と、優しい笑みを浮かべゾロは頭から手を離すと涙を拭うあたしの手を退け右手で頬を包むと親指で目から流れる涙を拭き取ってくれた
「ゾロらしくないね、優しすぎるよ。」
「それじゃ泣くなんてお前らしくねーよ。」
その言葉にあたしは頼りない笑みを浮かべた。するとゾロも口角を上げて笑った
「そうだ、」
「何が?」
「泣くな、笑ってろ。そっちの方がお前には似合う。」
そう言われると、自然に涙がまた出てきたと同時に泣く理由も出てきた
ゾロが好きだから、ただ、それだけの理由。
ゾロを想う気持ちが涙となって出てきていたんだと分かった
「言った側からまた泣いてんじゃねーよ!!」
せっかくゾロから笑えって言われたんだ
笑わなくちゃ!
泣くなよ、笑え
(泣くか笑うかどっちかにしろ。
ぶっさいくな面になってんぞお前。)
(ぶっころーす!!!)
fin
[泣くなよ、笑え]
⇒one piece:zoro
素敵な企画に参加させて下さってありがとうございます。
愛を込めて[性春メタリック]様へ