隠の王

□映る君
1ページ/3ページ

僕らは、朝からずっとテレビを見ている。


四角い箱から映し出される映像。

箸でゆっくり持ち上げられ
暖かな湯気を上げる。
美味しそうにぷっくりと割られるソレ。

司会者の女の人が様々な食べ物を紹介しているが、特に美味そうだとは思わない。

もっと美味しいものを知ってしまっている僕には、ちょっと名のしれたものでは、満足は出来ない。
もっとも僕が一番美味しいと思うものは、すぐ隣に居るのだが。


「―・・・何?宵風」
思わず見とれていると、その視線に壬晴は気づいた。
「―・・・なんでもない。」
考えていたことが考えていたもののため、気づかれたことに恥ずかしさを覚える。


頬が赤く染まっていないことを祈るばかりだった。

なんとなく見ていただけ―・・・という演出を醸し出すために、すぐに視線をテレビに戻した。



―・・・・チッチッチッ

時が少しずつ刻まれ
いつの間にか今は夜。




―・・・・暇だ。

つまらないと思う。
雪見も表の世の仕事で居ないし

壬晴が隣に居てくれても
ただテレビを見ているだけ。

ぼくもそれに合わせて
ボケーッとしながらテレビを見ていたけれど。
もうずっと5時間ぐらいこのままなのだ

流石に時間つぶしとはいえ、もっと楽しいことはないのか。

つまらない


思わず、ため息が出た
「―・・・はぁ」

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ