隠の王
□映る君
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僕らは、朝からずっとテレビを見ている。
四角い箱から映し出される映像。
箸でゆっくり持ち上げられ
暖かな湯気を上げる。
美味しそうにぷっくりと割られるソレ。
司会者の女の人が様々な食べ物を紹介しているが、特に美味そうだとは思わない。
もっと美味しいものを知ってしまっている僕には、ちょっと名のしれたものでは、満足は出来ない。
もっとも僕が一番美味しいと思うものは、すぐ隣に居るのだが。
「―・・・何?宵風」
思わず見とれていると、その視線に壬晴は気づいた。
「―・・・なんでもない。」
考えていたことが考えていたもののため、気づかれたことに恥ずかしさを覚える。
頬が赤く染まっていないことを祈るばかりだった。
なんとなく見ていただけ―・・・という演出を醸し出すために、すぐに視線をテレビに戻した。
―・・・・チッチッチッ
時が少しずつ刻まれ
いつの間にか今は夜。
―・・・・暇だ。
つまらないと思う。
雪見も表の世の仕事で居ないし
壬晴が隣に居てくれても
ただテレビを見ているだけ。
ぼくもそれに合わせて
ボケーッとしながらテレビを見ていたけれど。
もうずっと5時間ぐらいこのままなのだ
流石に時間つぶしとはいえ、もっと楽しいことはないのか。
つまらない
思わず、ため息が出た
「―・・・はぁ」