フルーツシリーズ

□ひとつぶの苺
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「…オレが身代わりになって、兄さんを助けて……オレも助かったなら…言おうと決めていた事があるんだ…」

緊張でドキドキしすぎてめまいがしそう。
目の前に居る、大好きな兄さん。
そう、もしもあの悪夢のように…兄さんをあの海に攫われずにすんだなら、言おうと決めていた。

兄さんが好きなんだって。

兄弟じゃなく、一人の男として。

あなたが好きです、って。

兄さんの肩を掴む手は震えて、鼓動の震動が身体中に伝わって、喉がカラカラになる。言おうと決めていたのに、肝心の声が出せなくて…。
兄さんが真剣な顔をしてオレを見ている。
何か言わなきゃ、明らかにこの間はヘンだ。
唾はたくさん出るのに口の中は全く潤わない。寧ろ逆に渇きすぎだ。
早く言わなきゃ。
頭がグルグルとした末、オレは遂に言葉を発した。

「梨が食べたい」

兄さんが間の抜けた表情をしている。

「だから、梨が食べたい」

オレの言葉に兄さんは大きな溜め息を吐いた。

ああああああああああああああああ!!!!!
オレのバカ!折角の告白の機会をっ…!!


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