七年ぶりの初めまして

□7.ビルからの落下事件
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毛利さんこと蘭ちゃんとコナン君と供に昼食をしていればピークは過ぎたようであり客足も落ち着いてきてコナン君がオレンジジュースを飲みながら私に問いかけてきたのは

「安室さんと奈々さんって知り合いなの?」

というもの。それに対し私は首をかしげ蘭ちゃんもパスタを食べる手を止め私のことを見つめてきた。なので私は紅茶を飲みながら

「安室さん"とは"この間初めて会ったよ?」

今日で2回目。安室さんとは、ね。そんな含みを持たせた言い方にコナン君は納得したのかしていないのか「ふーん」という返事を返し

「でもさっきすっごく親しげに話していたよね?ぼくの気のせいかなぁ?」

なんて言ってきたので私はコナン君に笑いかけるとハムサンドをオススメされてね、美味しいって話していたのと返しておいた。嘘ではない。

しかしコナン君は難しい表情を見せ蘭ちゃんが口を挟んできたのは「もしかして」そう言葉を途切らせ身を乗り出すとヒソヒソ話のように口元に手をあててもう一度、もしかして、と。

「西澤先生…」
「何?」

私も少し身を乗りだし蘭ちゃんは続けてきた。

「安室さんのこと」

その先は濁されたがすぐ伝わってきたため苦笑い一つ、椅子に座り直すと「違うよ」、

「安室さんタイプじゃない」

そう言い切った瞬間カウンターの奥でパリンと皿が割れる音がしたが気にもせず、こちらに近づいてきた梓さんが私に笑いかけると「今度はコーヒーなんてどうです?」と一言。
私と蘭ちゃんとの会話は聞こえていなかったようで私はそれを断ると立ち上がり

「蘭ちゃん、コナン君、梓さん、またね」

そう手を振りガラスの破片を片付けているであろう安室さんにカウンターから軽く顔を見せ「安室さんもまたね」と私はポアロを後にした。

カランカランという音と供に扉を抜ければ昼の日差しが私と通行人を照らしてきて、軽く空を仰ぎ見ながら歩き出す。なんだか車で帰るのが勿体無いが置いて行くわけにはいかない。
信号向こうにある駐車場に向かって歩いて行けばなんだか騒がしい声が聞こえてきて「見ろよ!」なんて怒鳴り声が耳に入った。その怒鳴り声の人物が空を、いや、ビルの上を指差しその先を見れば鋭い悲鳴が一つ、空から人が降ってきた。
高く長い悲鳴に私は咄嗟動くと落下してきた人を寸分の差で抱き止めた。

「っっ…!」
「いったぁ……」

ビルから落ちてくる落下速度とその人間の重さと勢いに息を止めつつ受け止めればその人間、女性はガタガタと震えながら何度も何度も「ありがとうございます」を繰り返してきていて無傷だとホッとすると肩の力を抜いた。

女性の肩を撫でながら座り込んでいれば

「奈々!!」
「奈々お姉さん!」

という声が耳に入り私は軽く深呼吸をして立ち上がり安室さんに肩を掴まれた。

「大丈夫か?!」

と焦ったような声に笑いかければ安室さんはジッと私を見つめ息を吐き出すと「良かった」と小さく呟きすぐ

「何を危ないことをしているんですか!!上手く受け止められなければ奈々さんも無事じゃなかったかもしれないんですよ?!」

と怒られてしまった。
まあまあ、両方無事なんだからと安室さんの肩を叩き「問題無かったでしょ?」と。

「痛いところは?」
「無いってば」

そうひとしきり話すと安室さんはコナン君と一緒に女性に近より声をかけているとビルから、恐らく彼女を突き落としたであろう男が姿を現し、物凄く速く警察が到着した。

美和子ではないか。

「奈々じゃない、もしかして貴女が?」
「あはは、そう、私」

美和子はため息を、そして茶色の背広の男が上と私を見やり、あの高さからよく受け止めましたね、と感心されてしまった。どうも。そしてお知り合いなんですか佐藤さん?!と驚いてもいる。

「私の従姉妹の西澤奈々さんよ」
「貴女が…!」

お話しはかねがねと続きそうだったが私から話を繰り上げて女性と男性を指差した。

「私よりあっち」

一応、美和子の同僚と握手をしておき二人は女性と男性の事情聴取を始めもう一度ため息を吐き出すと柵に身体を預け、そこにまざるコナン君と安室さんを見る。
そしてふと思い出した事柄。
美和子が前に愚痴を吐いていたそれ

『私が警察学校に入校した時私の先輩に当たる人達が問題児が揃って私の代だけ異様に厳しくなったのよね』

という言葉。美和子は私と安室、いや、降谷と一つ違いだからその問題児は降谷の代だろうなと思い少し笑ってしまったのは、なきにしもあらずという事。

そうして男女二人ともパトカーに乗るとさっさと行ってしまった。美和子は降谷のことを知らないようだがあんな目立つ容姿である。どこかで会っていてもいいだろうが知らぬ様子であり、考える私の前に影ができて顔を上げた。
そこにはコナン君と安室さんがいて、お疲れ様と言っておいた。

「奈々お姉さん凄いね」

その言葉に少しだけ笑い安室さんはどこか怒ったような雰囲気で私を見つめ、取り敢えずもう一度ポアロに来てくださいと手を引かれてしまった。
ちょっと断れない声色に苦笑しつつ歩き出し再び三人でポアロへと戻ってきた。

「安室さん、コナン君も、何があったんですか?」

という梓さんの言葉に二人は事のあらましを話すと蘭ちゃんも梓さんも私を見つめ

「西澤さんすごい……!!」

なんて言われてしまった。

「本当に、なんて事ないよ」
「いや、あの高さから落ちてきた人を抱き止めるなんて普通できませんよ!格好いい!!」

そう梓さんは笑い、もう一服どうです?とキラキラとした目で見つめられ、安室さんにも「座っていてくださいね」そうニッコリと微笑まれた。
あ、これ帰れないやつ。そんなことを考えながらもとの席に戻り腰を下ろすと蘭ちゃんが

「私も出来るようになれますか?」

と。なので「ならない方がいいよ」と呟き苦笑し降谷からは冷たい視線だけが送られてきた。帰りたい。


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