七年ぶりの初めまして

□10.カレーライス
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新曲についてメンバーと話していれば不意にスマホが鳴り、マナーモードにするのを忘れていたとメンバーに断ってスマホを取った。
そこには沖矢と表示されており秀ってばどうしたんだろうと考えつつ後で連絡し直すからと送り返しスマホをサイレントマナーにしてメンバーに向き直る。

「珍しいな、水蓮が練習中にスマホいじるなんて」

と言われ忘れてたんだよと返しつつ、よし、続きねと切り替えた。

新作のシングルの曲合わせと、前に言われたライブについてというそれに「私は完全黒子ならね」と答えれば「なんでそんなに隠れたいんだよ、別にいいだろ?」と言われてしまい私を抜いてメンバー達はやいやいと話している。待って待ってリーダー私何してんのあんたら。
ピアノの音を出しつつメンバーを見て、だって

「相手はこっちを知っていてもこっちが相手を知らないんだから話をしたりファンサしたりなんてクッソめんどくさいじゃん」
「すっげぇ本音でたな」

そんなメンバーの言葉に耳を傾けて「知らない人にキャーとかこっち向いてー」なんて言われて嬉しいの?全く知らない人だよ?私は心から嫌だ。しかしメンバーは嬉しいよと笑い私は嬉しいのかよと顔を歪めてしまう。

「だって、それだけ暁が好きってことだろ?喜ばなきゃ失礼だろ」
「うーん…」
「それにマネージャーはライブの予定を立ててるけど」
「はあ??」

思わずピアノをだんと押してしまいメンバーを見れば

「いま話しを通そうとしてるところらしいぜ」
「リーダーわたしぃぃいいい!!!!!何それ知らないふざけんな!!!!!!!!」

なんてわめいてみても三人は揃って「稼ぎたいじゃん」と言ってきて、思わずため息を吐き出すと「私は絶対顔出ししない、それが条件だ」と呟けば三人は「よし!」と拳を握りしめ衣装についてを話し始めた。

「はい!」
「水蓮どうぞ!」
「衣装は和を基調にしたいです!」

俺は曲!俺は演出!俺はマネともろもろ!と続き、とりあえず今は新曲の音合わせ!とピアノを弾く。
そのまま時間ギリギリまでスタジオにこもり夕焼けの中、全員でスタジオを後にした。

「俺どっかファミレス行くかな」
「俺もついてくわ」
「水蓮は?」

私は少し考えると秀のことを思い出し「私は解散するね」と歩きだしてメンバーと別れると私の横を子供達が駆けていく。
髪色と和服を崩し洋を取り入れたその服装は中々に目立つものであり子供達がこちらを振り返りながら「あのお姉ちゃん格好いい〜!」なんて聞きつつも小さな公園のベンチに腰を下ろした。

「もしもし沖矢?今平気?」
『あぁ、問題ない』
「さっきのメールどうしたの?」
『久し振りに会いたくなってな』

そんな嬉しい言葉に答えるとどうやら秀はカレーを作っているところらしくそれのお誘いらしい。
しかもコナン君やその友達たちも食べに来るらしく、コナン君は知っているけどその友達たちに突然お邪魔していいの?と思ってしまったが問題ないらしい。
だったらいいかと了承すると工藤邸だっけ?と聞き返しそこまでナビで行くから住所教えてと言えば迎えにきてくれるらしく公園の名前を聞かれた。来てくれるなら嬉しい。

待っていてくれと言って切れた通話にスマホの画面を暗くしてから空を仰ぎ見る。

今日もいい天気だったなぁなんて考えていれば程なくしてスマホが鳴り秀から到着したというメールが届き立ち上がる。
赤いスバルに相変わらず似合わない組み合わせなんて思いつつ助手席に座り車が動き出す。

「久し振り」
「あぁ、久し振りだな」

なんて軽い挨拶をしながらポロポロと話をしていればすぐ工藤邸にたどり着き

「沖矢のカレー楽しみだな」
「しっかり煮込んである。自信作だ、楽しみにしてくれ」

と言われ、その自信はどこからでるんだよと笑いかければ信じてくれと返される。
そうして車を降りれば昴さん!なんて声が聞こえ二人して振り返ればそこにいたのはコナン君とその友達たち。ついさっき私を振り返って見てきていた子供達がいて

「あー!さっきのお姉さん!」

なんてカチューシャの女の子が近づいてきて私は「こんにちは」初めまして、沖矢の友人の西澤奈々です。

嘘ではない。

そうして子供達と挨拶を交わすもコナン君と赤茶の髪の女の子、灰原哀という子だけが警戒したようにこちらを見上げてきていたが気にもせず、というより気付きもせず沖矢と供にカレーを盛り付け全員で食べ始めた。

「お」
「どうしました?」
「あの自信は嘘ではなかったんだなって」

そう呟けば沖矢は笑って「そうでしょう?」なんて。


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