怨霊inナイト
□5.特級仮想怨霊
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『特級仮想怨霊、無化被化』と呼ばれた女の子は未だ鋭い瞳のまま五条を睨み付けておりそれでも五条と会話をしているのだが真希も棘も女の子から溢れ出る特級の呪力にどうすることもできないでいる。
そう思うほどに、女の子の呪力は鉛のように重く冷たい。下手をしてこちらに意識を向けられたら何をされるのが分からない、いや、分かる。恐らく、消される。
この場に呪術界最強と言われる男といるのに心臓がバクバクと騒ぎ耳鳴りが酷い。
ジリジリと後退りそうになり背中に冷や汗が流れるのを感じながら浅く早く呼吸をしていれば棘も同じように表情を硬く引き吊らせ口元のファスナーに指をかけている。だがもし棘が呪言を使ったら一発で死んでしまうただろう。誰が?棘が。
そうして極度の緊張に気を張っていれば五条が笑顔のまま女の子に顔を向けたままであるが
「大丈夫」
と。
「真希、棘、大丈夫。無化被化……この子は何もできないよ」
その言葉で真希と棘はやっと呼吸を整えることができて、棘はファスナーから指を離した。その動作が五条の言った大丈夫の一言に安心していると分かるものであり、真希も腰にさしてあった短剣から手を離した?
「それで、無化被化」
「私をその名で呼ぶんじゃねえ」
「じゃあ"君"って呼ぶね」
女の子は小さく頷くとその目は緋色からピンクに戻り髪も同色に戻っていく。しかし青井着物の下から見える足だけはそのままであり女の子は長く細いため息を吐き出した。
「五条は私をどうするつもりなの?」
「本当なら君はまた封印することになるんだけど」
そこで五条は言葉を途切らせ「ひひ」と笑うと大きな背を屈め女の子に顔を寄せるとまじまじと見つめてから
「随分と厄介な縛りをつけられてるねぇ」
なんてのんびりと口にした。その「縛り」という単語に真希と棘はさすがに黙ったままではいられず、五条と女の子に恐る恐ると声をかけた。
「怨霊に縛りってどういうことだよ」
「ツナマヨ」
「これは調べれば分かることだけど、憂太と里香ちゃんみたいに互いが互いに繋ぎ止めてあるってことは知ってるでしょ?」
真希と棘は頷いて、それを見た五条は口端を吊り上げたまま続け
「この子の場合は封印されたときにその代価として"生きた人間に手をだせないように"けれど"封印された器に"誰かが手をかけた時、そこで姿を現し言葉を交わすことができる、話すことができる。無化被化…ごめん"君"だったね、そう君が封印されたのは君を、君の呪力に恐れをなした呪術師たちが総力を上げて殺さず生きたまま封印し、君はそのランプの中で今日まで過ごしたんだ。何度かランプから出たりはしていたしランプに封印されていたうちに死んでその後、特級仮想怨霊になったんだ」
そこまで繋げた五条は真希と棘を見つめ二人は考えこみながら「分かる?」という五条の言葉に頷くと
「つまりそいつは特級仮想怨霊でありながらも、人に危害を加えることができないってことだよな?」
と、その真希の言葉に五条は頷いて
「本当はランプから出られないはずだしこの器が壊れたりしたらこの子は晴れて自由の身になるか、祓わなくちゃいけないことになるかもしれないしね」
中々ままならないんだよ。そうヘラヘラ笑った五条に女の子はため息を吐き出して全面的に当たっていると頷いた。
でもだとしたらこの女の子は一体何歳の時に死んで、そして特級仮想怨霊になったのだろうという考えはしかと女の子に伝わったようで、五条と話していた時の凍てつく瞳は柔らかなそれに戻り話し始めた。最初の時のように。
「五条の言っていることは概ね当たっているけど自分で自分のあり方を開示はしないから!なんかこう秘伝のタレ!みたいに封印に封印が重なって私にはもうどうすることもできないんだよ。器…ってもランプだけど、それが万が一にでも壊れたりしたら私がどうなるかも分からない。本当に自由の身になれるのなら是非とも壊してほしいけどそしたら私は祓われるんでしょう?」
どっちにしろ私には害にしかならないんだから安全な"害"にとどめてほしい。
「つまり?」
「私はこのままランプにいるよ、いいでしょ?」
そいた首をかしげた女の子に五条は笑って「もちろん」と同意してみせた。