七年ぶりの初めまして

□15.目覚めと別れ
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「久し振りによく眠れた」

そう口にしたのは間違いではないようで、昨日伺い見れた目の下の微かなクマはなくなっていて、奈々は服を着替えながらそっと笑う。

「あー…シワになってる」

そう呟きながら着物を着れば降谷は特にどうとも思っていないようでスーツを見にまとっている。

「警察?」
「うん、そう」

ちょっと仕掛けてみたが降谷はあまりにもあっさりと認めたので本の少し驚いてしまったがまあいいだろう。
そうしてキッチリ帯まで絞め髪をまとめ上げようとすれば降谷が奈々の腕を引き連れられたのは洗面台。

鏡を前に立たされれば降谷に髪をすかれまとめ上げ結われていく。その間奈々は黙って受け入れる。

私が着物を着ている本の少しの間に降谷はささっとシャワーを浴びていたようで恨めしく思ってしまう。

私も帰ったらシャワーを浴びたいのだが折角結わってくれた髪をほどくのは憚られてしまう、それでもまあいいのだけれど。

思考を放棄して鏡越しに降谷を見つめ受け入れていれば随分と手の込んだ編み上げにされてしまい、これはほどくのは難儀だななんて思いつつ。

そんなことを考えていれば鏡の中の降谷と目が合い二人して笑顔を浮かべてしまったのは本当に自然なこと。

「そう言えば、今何時?」
「もうすぐ6時」
「あー………」
「どうした?」

そんなやり取りをしていれば降谷は髪を結い上げ終わり私の肩を掴むとクルリと身体の向きを変えられ、今度は何の障害もないままに二人して見つめ合う。

「朝の走り込み忘れた」

それにこの年だが無断外泊。そう呟くも降谷は別にいいだろと笑い気にする必要ないだろ?今は、と。

私はため息を吐き出してしまったがやはり降谷の言葉通りにどうでもいい事としてそっと微笑むと

「零の貴重な寝顔とスーツ姿見れたからね」

そう降谷の腰に抱きついた。

「れー、良いにおーい!」

そう引っ付けば降谷は小さく笑い奈々の首筋に顔を寄せ「俺と同じ匂い」なんて言われるも私はシャワーを浴びていないしそんな香りをかがれるのは拒否したいがなぜ同じ匂いなのかと首をかしげてしまった。

「俺の布団の匂いが移ったんだよ」

なんて言われ思わず声を出して笑ってしまった。

そうして二人して数秒ほど密着していたが降谷のスマホが鳴り響き奈々と降谷は動き出す。

降谷は内ポケットからスマホを取り出し応じており奈々は奈々でソファ前の机からスマホを拾い指を滑らせた。案の定、母から外泊するなら連絡しなさいとあり「今から帰ります」と送り返した。

互いに相手とのやり取りを済ませた私と降谷は視線を絡ませ「行こうか」と玄関に向かい歩き出す。

下駄を突っ掛けて降谷と供にマンションを後にした。

降谷の乗っている車は美和子との色違いで同じように見えたので何となく尋ねれば

「RX-7だよ、それがどうした?」
「いや、知り合いと色違いだなーって思って」

それだけ、とそうして己の車に乗り込むと

「突然だったけどありがとう」
「いいよ零、行ってらっしゃい」
「…行ってきます」

降谷ははにかんだように笑い答え私は降谷と別れ帰宅した。そうすれば母に軽く怒られてしまい一人だけ走り込みに出掛け直し1日を開始した。


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