没庫(編集)

□王妃。**
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「ん…っ、ふ、…っ、ぁ、あ…っ、」

やめて、光ちゃん…っ。

ひそひそと聞こえる会話に耳を澄ませて扉の前に近付く。青年が少し間を置いて扉が醸し出すとんでもない色気に圧倒された。妙な、色っぽさを孕んだ声が漏れて、持っていた花束をぎゅっと抱え込む。一体何があると言うのか。

ここに来る前。
やたら光一に惚れ込んでいる同期グループ内の1人が、青年が抱える花束を指差してどうしたの?と聞いてきた。
あげるのだ。
特別なことはないけれど、とても綺麗な花を見つけたから剛くんに。つい買ってしまったのだ。そんな話をしたらケラケラと彼は笑った。黄色やピンク、赤やオレンジ。暖かくて柔らかい色が好きな剛の、好きな花が店頭に出揃っていた。
折角、久しぶりに現場で会うのなら。
仕事は別々だけれど、挨拶ぐらいなら。そう思ってライバルグループとの打ち合わせに持ってきた。

「今から渡しに行くの?」
「うん、」
「……どこに?、楽屋?」
「そうだよ。」

だって、これから撮影に入れば忙しくて挨拶に行けなくなる。青年が伝えた後大きな花束を抱えたら、目の前の彼は少しだけ眉根を寄せた。

「やめたほうがいいよ…、」
「……、なんで、」

彼が一歩近付く。
まぁ、都市伝説みたいなもので…。前置きをしたあとそっと2人の楽屋に対するルールを耳打ちした。聞いたこともないそんなルールに青年が息を呑む。理由は何か?何度聞いても、明確な答えは得られない。

だって、都市伝説だから。
絶対に楽屋へ通してはもらえない。

頑なに言い張る目の前の彼の姿に違和感を得る。

「……も、しかして……行ったことある………と、か?」

大きな瞳を瞬かせたあと首を傾げる青年に、彼が動きを止めた。まるでロボットのように首を横へ振る。分かりやすい嘘だ。知らないけど。矢継ぎ早に伝えてから続けざま絶対後悔する、一言だけ言葉を落とした。

口元をぎゅっと結んで彼が視線を逸らす。

いや、後悔しているわけではないのだが、それ以上、光一へはしつこく付き纏えなくなったのだ。近づくたびに剛の姿が脳裏にチラつく。美しくて、妖艶だった。見たこともない扉を無理やりこじ開けさせられたような。
光一のことが好きで、尊敬しているはずなのに。何故か剛にばかり目がいってしまう。

剛を見るたび、話すたびに胸が弾むのだ。
具体的なことは言えない。ふるふると、首を振って俯いた後は力の無い声音で、本当にやめた方がいい。ボソリとつぶやく。

そうまでされたら気になる。

騒つく胸中を抱えて青年が楽屋に続く通路の前でマネージャーに語り掛けた。最近多いんですけどね…、困ったように額を掻いて、今日はちょっとタイミングが…。また、後にしてもらえないだろうか?頭を下げる物腰の柔らかいマネージャーに、物分かりの良いふりをして頷いた。

どんな…。
タイミングって何なんだろうか。
あとって何分後?

青年が抱えた花束を見下ろす。
剛の好きな花ばかりだ。一番好きな向日葵はそこには無いけれど。渡したあとの喜ぶ顔を想像したらやっぱり体がソワソワと落ち着かない。

まだ、5分も経っていないと分かっていながら青年が一歩通路へと足を踏み込んだ。普段は決して入り込むことのない未知の空間。メンバーにも、他のグループにも、数人に聞いた。誰も楽屋に訪れたことはないし、ルールが存在する都市伝説は、殆どの身内は知っていた。そして、みんなそれを律儀に守っている。止めときな、と止めたあいつを除いては。

まるでRPGのラスボスエリアに近付く気持ちだ。仰々しくて物々しい。それでいてものすごい色気に覆われている。

扉の前で軽く握った拳を振り上げたら、ヒソっと聞こえる声に思わず耳を澄ませてしまった。

『ん…っ、こ、ぅいち…っ、ひと、…っきたら…、』
『ふふ、来ないって、』

良いから、集中しろ。
また聞こえる声音に、青年が軽く握った拳を降ろす。ぎゅっと花束を抱き締め直して閉まりきっていない扉を軽く人差し指で押した。音も立てず、すぅっと隙間を見せた扉。ごくりと息を呑んでその隙間から室内を覗く。簡素な作りの、大きすぎず小さすぎない楽屋。

広い鏡台の机に乗り上げて座った剛が口元を両手で覆って目を閉じていた。

「ん…っ、ふ、…ぅ、あ、ぁ、…っ、」

声を噛み殺して呼吸を繰り返す。

「ん、ほら、もっと脚拡げて、」
「ぁ、ん…っ、むり…っぃ、」

ひんっと泣いた剛が、強引に押し拡げられた脚を膝裏から開帳される。その間に膝まづいた光一がぴんと聳り立つ剛の性器に唇を寄せた。

「、ふふ、とろっとろ、ほら、舐めてほしい?」
「ん、ぁっ、あぁ…っ、」

首を振るけれど早く咥えて飲み込んでほしいのだ。少し強引に舌の腹で擦られたい、そんな破廉恥なこと言うことも出来ず剛が首を振る。恥ずい、恥ずいと涙ながらに訴えても、もう無理なのだ。光一から与えられる口淫には毒の効果がある。気持ち良すぎて狂ってしまう。

カサついた唇の刺激さえ興奮の材料になる。

「ほら、ここ。びくびくしてる。」

裏筋の浮いた所に舌先を乗せてころころと撫でたらびくんっと剛の身体が跳ねた。気持ちいでしょ?見上げる瞳に剛が応える余裕も失う。

「あと、ここも、ええねん。」

陰嚢の隙間に舌を差し込んで食むっと唇で挟む。つんつんと突いてはゆるゆると甘噛む。

「ひ、ぅ、あっあぁ、あ…っ、」
「ふふ、すっげぇ、」

躊躇わず舐って口内へ収めたあとは、光一が愛おしそうに性器の根元へ口付ける。

「ん、漏らしちゃっても良いよ、全部飲み干すから、」
「ん、や、ぁ…むり…っ、」

光一の変態を通り越した発言に剛が腰を揺らす。毎度、剛の漏らしたもの全部堪能したいと言うだけあってその眼差しは真剣だ。いつか、口淫だけでお漏らしに導いてやろう、そんな画策を目論んではいるが中々どうにも剛は強情なのだ。

ぬろっと舌を這わせて竿に絡みつく。
ねっとりと動くその器用な動き。くびれを一周させたあとは舌の腹で何度も先端を擦る。ぐしゅぐしゅ、と音を立てながら口の中に収めて喉の奥まで剛の性器を迎え入れると、身体を丸めて剛が震えた。

「ん…っ、ぁ、あ、ぁ…っ、こ、ちゃ…っ、らめ…っ、」
「ふふ、めっちゃ気持ちよさそうやん、」
 
時折優しく歯を当てたら剛が喉を逸らせた。
口元を押さえていた手のひらを片方光一の額に乗せる。口の端を上げて光一がその手を取った。

「あ、っあぁ、…っ、い、…っちゃ、…っ、また、ぁ…っ、」

びくんっと肩が大きく震えて数度目の射精。指を絡めてお互いに強く握りあう。
慈しみの込めた口淫。愛おしそうに、剛のそれを口の中に収めて愛でる美しい横顔。

青年が光一の口の動きを注視する。
あんな風に丁寧に、高みを与えて、慈しむように大切に口付けるそのさまは、王妃へ誓いを立てる王のようなのだ。

愛の囁きなんて無くても、一目瞭然だ。
抱えていた花束を胸の内側で締め付ける。

「ん、あっあぁ、こ、ぉちゃ…っ、またぁ、…、」
「ん、いいよ、全部飲むから、」

じゅぽっと勢いつけて性器をまた喉の奥へ飲み込む。根本を唇で扱きながら陰嚢をもみしだいた光一が、射精を促す。
あ、ぁ…っ、と漏らす甘やかな声。赤く潤んだ目元がうっとり蕩けて、剛が押し上げられていた脚をピンと反らせた。ぎゅぅっと足の指が丸まってびくびくと痙攣する。

「んん〜〜〜っ……っ、…〜〜、」

声にならない叫びと共に勢いよく放出される甘い蜜。ごくりと喉仏を上下させながら光一が飲み下す。
ちゅぽっと唇を離して、糸を引く口の端をぺろりと舐めた。射精の余韻でびくびくと震える性器を優しく握ったあとはまた、先端から竿全体へ丁寧に口付ける。満遍なく慈しみの雨を降らす。食むっと陰嚢を咥えて中のコリを唇で刺激すると、剛がまた天を仰いだ。

「ふふ、これも気持ちえーやろ?」
「あ、ぁ、…っ、い、ぃ…っ、」

光一から剛へ与える愛の重さを物語っている。
愛おしいのだ。瞳の柔らかさにまた青年が息を呑んだ。今まで見た、どんな姿よりも剛は美しくて。
今まで見たどんな姿よりも光一はカッコいいのだ。愛おしそうに愛撫を重ねる光一に思わず青年が釘付けになってしまった。

凛とした横顔に青年の胸がときめく。
慈しみを込めて性器にキスを送るその姿に言いようのない、羨望とむず痒さが体を駆け抜けた。

かっこいい、その一言に尽きるのだ。

「こうちゃぁん……、もぉ…、」
「んー…、もう少し、」

恥ずかしい。そろそろこの格好は勘弁してほしい、剛が強請ると光一が唇を尖らせた。顔を寄せて、光一の高い鼻が剛の性器に擦り寄る。すんっと息を吸って剛の香りを堪能している。ちろちろと舌先で根元と裏筋をくすぐりながら名残惜しそうに頬を寄せている。

「好きやなぁ…、俺、剛のちんちん、」
「…っ、や、ぁ…っ、やめて…っ、」

可愛いんだもん。見上げて呟く顔に剛が目を閉じて顔を背ける。射精の余韻も抜けて力なく萎びた性器にまた口付ける。

「ん、…っ、光一のも…っ、」

もぞもぞ動いて剛が光一の前髪を一房指に巻きつけた。ふふって笑う顔に青年がまたときめく。
妙な居心地の悪さに、そっとその場を離れた。抱えた花束を見つめながら、脳裏にこびり付く光一の横顔。
剛の性器を愛おしそうに咥えて、口付けるその姿には胸の一番奥がとくとくと震える何かが秘めている。

廊下を抜ける頃には花束の意味を忘れてしまった。

ーーーfinーーー

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