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□愛のカタチ/#お買い物編
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「剛、ガウンを脱ぎなさい。」
「…っ、ん…、」

光一の刺さる声に剛の肩が震える。ガウンの生地を握りしめて、もじもじと中々行動に移せないから光一がため息を吐いた後、ソファの上で足を組み替えた。

「剛、」

もう一度名前を呼ばれて、ゆっくりと顔を上げた剛が今にもこぼれ落ちそうな瞳に水分の膜を張る。

「……、っ、…こ、ここで……、」

戸惑う剛に光一は何も言わずに見上げるだけ。チラリと室内を一周するように見渡した後もう一度俯く。
室内の中央にはガラスのテーブル。
その四隅を囲うように本革のソファが数台鎮座。テーブルを挟んだ向かいには、光一が親しくしている店の店主が、柔らかい笑顔を張り付けて二人を見守る。
数人のアテンドは壁際に立つ。
恭しく頭を擡げる店員をチラチラと気にしながら剛がガウンの紐に指先を掛けた。人前で裸になるのは、社交場で仕置きを受け時だけだ。その時も裸では無いのだが。

ゆるりと、紐を外して、恥じらいながら剛がガウンを落とした。

行き場の失った両手をどうしたら良いのか分からず身体に巻き付ける。慣れのないその仕草も、未だにウブで可愛いのだ。

キラッと光った宝石が胸元で揺れる。
左の胸には、小さな小粒サイズの真珠が乳首を挟むように嵌っている。右の胸にはルビーをあしらった宝石がキラキラと揺れた。剛の身体を目にした数人のアテンドがほぅと息を吐く。白く美しい肌は、光一が与えた仕置きの跡以外は何も無い。真っ新で美しい。

ガラスのテーブルに並べられる幾つものお道具たち。剛が知っているものもあれば、知らないものもある。何を、どこを、どんな風にいじめ抜かれて、泣かされるのか。
躾のお道具を見るだけで、ぞわりと背筋が震えた。怖い…。
剛の瞳に浮かんだ涙がほろほろと頬を伝う。

黒革のトレーに乗せられた平型のラケットが二種類。そのうち一つを手に取って光一が軽く振る。

「剛、尻を出せ。」
「…っ、……い、ま…っ、」

仕置きを受けるようなおイタをした覚えはない。ここで尻を打たれるような、何をしたのか、剛が逡巡する。咳払いが剛の耳に届いてハッとした。慌てて、光一の足元に座り込んだあとはゆっくりとその顔を見上げる。擦り寄るように頬を膝に擦り付けてから、ゆっくりと足元に蹲る。
尻だけ高く突き上げて四つん這いになると、剛が両腕の隙間に顔を埋めた。

「…っ、…ん、…お、…お願い…、します、」

手に取ったラケットを光一が弄びながら、剛の尻を撫でる。背後で聞こえる空振りの音。テーブルの向かいに座った男が説明を始めた。そのパドルは上等な木目を使ったのだとか、握りやすいグリップは滑り止めもついていて奴隷の粗相を叱るにうってつけなのだとか。

ペチペチと尻を打つ感触に剛が震える。

「剛、今日は沢山泣け。」
「…っ、たくさん……、っ、」

いつも人前で躾を受ける時は、だらしなく泣き叫ぶのは禁止されている。声を殺して数を数え続けるのがルールなのだ。するりとパドルで尻を撫でたあと光一が震える剛の肩を見下ろして微笑む。
今日は剛のためのお道具を買いに来たのだ。

存分に痛みを味わいなさい。

頷くのを確認して光一が右手を振り下ろす。容赦のない破裂音が響いて、一振りだけで剛の尻たぶが腫れ上がる。許可が降りた通り、剛が叫ぶ。あまりの痛さに背筋を逸らせて息を引き攣らせる。
もう一打、無遠慮にパドルが振り下ろされて剛が叫び泣いた。

悪くない反応だ。光一がその姿を見下ろしながらパドルを撫でる。
持っていたそれをトレーに戻して、もう一つ用意されているパドルを持ち上げた。木で作られた板とは違うラバー素材のそれ。申し分のない軽さ。軽く振るとしなやかな音が空中に響く。剛の尻に軽く当てると、ぺちんと音を立てて、しなやかに湾曲した平型の素材。
軽く触れられただけで、剛がぞわりと震えた。
瞬時に悟る、これは相当に痛いのだ。身体が硬直したのを見逃さない光一が口の端を上げた。どれくらいの力が必要なのか、軽く振り上げて打ち付けただけで、先程とは比べ物にならない悲鳴が室内を劈く。

「…っふ、…ひ、…っ」

息を止めた剛が尻を引いて首を振る。
いつもの、躾の道具とは比べ物にならないのか姿勢を崩して剛が叫ぶ。

「剛、」
「ひ、ぅ…ん、…ごめんなさ…っ、」

四つん這いに姿勢を戻して剛がもう一度尻を高く掲げる。再度振り下ろされた鞭は、今度は先程よりも力が加えられている。バッチンと大きな音が痛々しい。じんじんと尻たぶが腫れて熱を持つ。
ほろほろ、涙をこぼして剛が尻を引く。

「こら、」
「ひ、…ぅ、ごめ、なさ…っ、」

どうです?
向かいに座っていた男が口を開いた。

「軽量化に加えて、重厚感は今までと変わらず。力の加減によっては10も打つ頃には尻の皮が剥けて腫れ上がります。」

淡々とくり出される説明に剛の身体がびくりと震えた。乗馬用のラバーを使用してるから、しっかりと罰を与えるのには打って付けだとか。腕の隙間に涙の水溜まりを作って剛が、鼻を啜る。

「剛。」
「すん…っ、はぁい…っ」

光一がラケットの先端で、赤く腫れた尻を撫でた。持ち上げた尻が震えて支える脚ががくがくと震える。

ヒュンッと空を切る音。
直後に響く、バッチィンと打ちつける音。

「ん、ひ…っぃい、…っあ、あぁあーーーっ!!!」

背を逸らして泣き叫び。
剛が奥歯を噛み締めた。

「剛、」

光一が、背後からリードを引いて、それを合図に剛がゆっくりと身体を起こす。真っ赤に腫れ上がったお尻が燃えるように熱い。
堪らなく痛い。
その場に正座をして光一の足元に擦り寄るが、腫れ上がった尻が脹脛に干渉するだけでも痛くてどうしようもないのだ。

すんっと鼻を鳴らして光一を見上げたら、緩やかに曲線を描いている口元。涙でぐしゃぐしゃな目元を親指で拭った後はその目元を優しく舌で引く。

「どっちが好きだった?」
「ん、ふ、ぇ…?」
「お前のお尻を罰するための道具だ、お前が選べ。」

好きな方はどっちだった?光一が首を傾げる。視線をガラステーブルに移すから剛が恐る恐るその先を追いかけた。
ゴクリと喉を鳴らす。
二つ並べられたパドルを見つめて、また涙が溢れた。

ぐすっと、鼻を啜って剛が目を閉じる。

「剛、昨日の粗相を覚えてるか?」

剛の顎を掴み上げて優しく擽る。
昨晩も、言いつけを守れなかった。逆らってしまった罰を受けると思ったが、昨日はそれが無かった胸を撫で下ろした剛だったが、次に光一から発せられた言葉に息を呑んだ。

「帰ったら、お前の好きな方を使ってたっぷりと躾けてやる。」

長く使うお道具なのだから、気に入った方を選びなさい。光一が剛の頬を撫でる。

「………気に入った……方……、」

じんじんと痛む尻。
ぐすりと剛がまた鼻を鳴らして、涙目に光一を見上げた。

「…っ、木の……板…はとても痛かった、です…。」

剛が息を止めて、唾液を飲み込む。
ほろほろ溢れる涙も拭えず、光一を見つめて。答えを見誤ったらそれこそ大変な事になる。剛が気にいる方を、そう言いつつ光一が望んでる答えは決まっているのだ。
剛もそれをよく理解している。

「…っ、ふ、たつめの…パドルも……とても、痛かったです…、ぼくは言いつけを破ってすぐに粗相をしてしまうから、……、我慢できないくらいのお躾をして頂きたい…です、」

乗馬の鞭で作ったパドルでお仕置きを受ける方がいい子になれます…。細々と小さな声音で剛が続ける。微笑んだ光一がトレーに置いたパドルを手に取って軽く振った。

「これか?」
「…っ、……は、い……、」
「そうか、じゃぁこれにしよう、」

剛の前にそれを差し出して光一が口の端を上げた。慣れた仕草で剛が身を乗り出す。パドルの中央に顔を寄せて、ありがとうございます、と呟いたあとそこにキスを贈る。

満足そうに微笑んだあとは剛の腕を引いて膝へ招く。鞭で試し打ちをされた皮膚がピリリっと痛んで思わず小さな声を漏らした。宥めるような光一の手つきが剛は大好きなのだ。鞭の痛みで既に膨らんだ性器を指先で突きながら、光一がくすっと微笑んだ。

「感じた?」
「あ、…っ、ん…、」

照れた剛が俯くから光一が耳まで赤くしたそこに唇を乗せた。ぱくりと咥えて舌でその輪郭を縁取る。

「そのうち、鞭だけでいけるようにしてやる、」
「ん…っ、ぁ…、」

むくっと膨らんだ亀頭の先端に指を乗せてずりずりと尿道を擦る。剛が唇をキュッと結んだ。出来るならここも飾りたい。
そのために、特別なジュエリーショップに連れてきたのだから。

光一が片手を軽く上げたら数人の店員がジュエリートレーを持って現れた。ソファサイドに並べられた長方形のトレーには色鮮やかな宝石が埋め込まれた、見たことあるお道具が並べられている。知ってるものもあれば、知らないものもある。剛の背中がぞくりと震えた。

背後でまた、男が喋り出す。

使っている宝石は全て本物なのだとか。ひとつひとつ手作りで精巧に作られている。品質には何ら問題はないのだ、と。剛の白い肌へ賛辞を送りお道具と宝石の特徴を話していく。その間も光一の指先は剛の性器をやわやわと握ったり、擦ったり。撫でたり摘んだり。

「堂本様、排泄の管理はされていますか?」

不意に聞こえた声を捉えて剛が赤面する。クスッと笑った光一が陰嚢を掌で揉み合わせながら首を振った。

「いや、そこまではしていない。」

別に今後もするつもりはないが、、、ここで言葉を区切ったあとじっと剛を見ている気配。とうの、剛は聞こえた言葉を頭の中で反芻する。排泄の管理…。それは、どんな事だろうか…?

「たまに、躾の一環としてするぐらいで、それを快楽にしようとは思っていない、」

男はそうですか、と答える。
剛の周りで行う質疑応答。いたたまれない気まずさに剛が更に身を固くする。光一が性器の先端に指を2本置いてくぱっと、尿道を少しだけ拡げた。

「ん、…っぁ、」
「ここに、」
「、ん、ふぇ…っ、?」

ぼんやりする剛の耳元に唇を寄せた。

「カテーテルを差し込んで亀頭をプラグの檻で締め付ける。そこに鍵をして、電源入れればカテーテルの先端が尿管を通して膀胱を刺激する。」

強烈な排泄感が伴っても容易に出す事は許されない。鍵を外されない限りは絶対に、一滴も零せないのだ。

「上手におしっこのおねだりができない限り、出すことは許されない、」

説明しながら光一が脳裏で描く。破裂しそうな膀胱に顔を歪ませていじめ抜かれる剛はきっと、たまらなく美しいだろう。
おしっこを出させてください、泣き叫ぶ剛の姿をイメージして口角を上げた。剛が恐る恐る顔を上げる。目が合ってまた硬直した。

ご主人様に排泄の管理をされる事は至高の喜びだと社交界で集まったボトムが話していたのを思い出す。上手にお願いができればその後のご褒美は蕩けるほど甘美で、おねだりが出来なくて与えられ続ける苦痛にも愛を感じるし、排泄のお許しを貰ったあとのお礼もご主人様を満足させられたら最高のご褒美をいただける。お礼を怠ったら、酷い罰を受ける。そんな話を思い出して、ふと光一はどうだろう、と考える。

きっとどちらも素晴らしいだろう。

それを考えたらとても興味が湧くのだ。

「…欲しい?」
「ん…っ、ぅ…、」

ちらりと視線をトレーへ。見たことのないお道具。細くて長いノズルのお道具と亀頭を覆う鉄格子の小さなカバーを見つけてそれが、そのお道具なのだと剛が確信した。
謝って泣き叫ぶ自分の姿と、鬼のように厳しい光一の姿が鮮明に浮かび上がる。

あぁ、怖い…。
そう思いながら、ぷくりと蜜の粒が溢れてしまった。ねとっと光一がそれを指の腹で潰す。くちゅくちゅと音を立ててトントンと優しく叩く。

「おしっこ……、我慢できなかったら…?」
「ふふ、分かるやろ?」

あぁ……。
またぞくりと背筋が震えた。

大きな瞳に水分の膜をためて、瞬きと共に涙がほろりと落ちた。剛が、ゆっくりと首を縦に振った。こくんと、頷く姿に光一が興奮を覚えた。光一が、視線を剛の背後へ向ける。

「これを貰おう、」

買うなら、特注だ、と。
すぐさま執り行われる予約のやり取り。専門医のところで剛の尿道の長さと、太さを測るのだとか。
剛の身体に合ったサイズの剛にしか使えない、剛のものを作るのだ。宝石は何しようか、光一が悩む。ふっ、と緊張を解いた剛がその胸板に寄りかかってため息を漏らした。

新しい自分の出現に剛が一番戸惑う。
また新たなお道具が増えてしまったのだから。その他にも幾つか商品の説明を受けながら話す声に耳を傾けて、剛が思いを馳せる。

もう、一生この人の側を離れられない。

ーーーfinーーー

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