小説 短編集.10

□次の日の朝。
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「ん、んぁ、あ、ぁん…っあぁあ…っ、」

片方脚を抱えて、側位で突き上げたらきゅぅぅと内側に力が篭った。ゴツゴツと行き止まりを叩いて、臍の下を撫でる。

「ん、ぁん…っ、あぁ、あ、ぁ…っ、」

甘えたような剛の鳴き声。
まるで子猫。枕に顔を埋めてひんひんと啼くから、可愛くて、可愛くて。

「ん、剛、」

こっち見て。
顎を掴んで顔をこちらに向かせる。
涙と涎でどろどろだ。

一際深く密着したら、キツいくらいの締め付けを感じる。ぐぐっと内側で内圧が上がってぐわりと精巣が震えた。
訪れる勢いに任せて発射。

背を逸らして剛が俺にしがみ付く。


ーーーー


「つよ?…剛?」

数度揺すってみるが、唸る声だけが聞こえる。ベットの中で、もぞもぞ動きながら、顔を少しだけ出した剛が薄く瞼を開けた。

「俺、もう行くよ?」
「んぅ………、もぉ〜……?」

もうすぐ、ロビーにチーフが来る。
ベットに乗り上がって囁いたら、もにゅもにゅしながら剛が布団の間から手を伸ばす。

「ふは、どうした?」

自分でもびっくりするくらい甘い声が出た。恥ずかしくなって、咳払いで誤魔化す。手を掴んで指を絡めたら力無く握り返された。

「むぅ……、きょぉ、おうち、かえる…、」

もぞっと顔を出した剛が目を閉じたまま呟く。

昨日地方から戻ってきてそのままホテルに来たのだ。お土産あるからって。
ナマモノだから、そう言いつつテーブルに広げていったお菓子。

生物?
何が?

殆どは加工ものばかりだったから、意図が掴めないでいたらぼくが、なまもの。剛がくふっと笑った。早めに召し上がってって。
一本取られましたよ。

ぐったり眠る横顔を布団の隙間から眺める。

「俺は、帰れそうにも無いからさ、」
「むぅ……、」

呼びかける声に何とか反応しながら小さな声でもごもごしている。今日も…、って聞こえる。
また、来週も地方に行くからパンを迎えに行くかどうか悩んでいたが結局夕方に行くってやり取りを姉ちゃんとしていたけど。

ぱんちゃんの写真送るね、とか何とか。辛うじて聞こえる声。

「取り敢えず、俺、行くよ、」

絡めていた指を外して隙間から見える顔の面積にキスを数回。唇も突き出すからそこにも吸い付く。

「んぅ…、」

いってらっしゃい…。
また小さな声が聞こえて、剛が布団から指先をひらひらと振る。

じゃぁな。
声を掛けて、ベットルームを後にする。
いつもの帽子を片手に出入り口のクロークに向かう。
靴を履いていたら、背後から光ちゃんて呼ばれた。

ハッとして振り向いたら剛が布団を被ったまま歩いてきた。

「おぉ、寝ててよ、」
「んぅ、…いってらっしゃいしにきた、」
「ふは、さっきしたやん、」

近寄って来る腰を抱いて顔を覗き込む。まだ眠そうだ。
目もあまり開いてない。

「眠いやろ?」
「んぅ……、」

だって次いつ会えるか、分からへんもん…。
また何やらぶつくさ。腕を伸ばすから抱き締めたら首筋にチクリと痛みが走った。

「…っ、イテ、」

痛い訳じゃないが。
なに?
剛を見たら、またぼんやりした眼差しのまま、布団を捲って鎖骨を見せてきた。そこについた赤い跡。
昨日の俺が付けたキスマーク。

「……しかえし、」
「えー、」

クロークの鏡を覗いたら、薄らついた赤。
剛を見たら、八重歯を覗かせた。

「いってらっしゃい、」

手を振ってから、そのままリビングルームに戻ってしまった。

これは不意打ちだったな。
衣装に着替える頃にはきっと消えてる。俺が付けるようなガッツリした跡じゃ無いけど、普段はあまり見ない剛の独占欲に少しだけ、にやつく。

ーーーfinーーー
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