小説 短編集.10

□香水*.B
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「制汗剤?なんで?」

2人を見たら首を傾げられた。
正しいですか?これって普通でしたっけ?妙な話し合いが続く。

制汗剤をプレゼントする意味がどこにあるのか?香水を渡す意図は?
そんな話題で持ちきりだ。

のほほんとしてる偵察部隊に少しだけ呆れる。普通なわけあるか。

「制汗剤後輩からもらったらどうよ?」

2人が腕を組んで考え込む。
嬉しいけど、複雑かなぁ…とか何とか。

「いやぁ〜…ちょっと、…複雑っすよね、」
「でしょうよ。」

嬉しい時もあるけど、なんでもない日にそんなもんもらったら微妙な空気になるだろ。そんな事を伝えたら納得したように2人が頷いた。その他にもボディソープやら、香水やら、と。
そんなもの立て続けにもらったらそら、匂いも気にするわ。

「で?剛の反応は?」
「なんか、微妙そうって言うか…、」
「複雑な感じでしたね、」

あぁ、でしょうよ。




って話を聞いたよ、とも言えず。
ふんふん、鼻歌を奏でて何やらキッチンで作業をする姿を眺めた。

久しぶりの帰宅だからな。

今日帰るって、昼間に連絡した時はそれはそれは嬉しそうだった、らしい。
チーフ情報だが。
何度も、ほんまよね?って連絡が来たらしい。だからほんまですって何度もそのやりとりをしたのだとか。
メッセージ見せてもらってなんか、キュンとした。

腕を組んでじっとテレビ画面を凝視。
見たまま意識は全く違う方へ。さっき風呂で見かけた見慣れないボディソープ、あれが噂のやつか。
ふと思ったが、使う気にもなれず、切り出す方法が分からなくて悩む。

「なんか、悩み事?」

エプロンを外しながら戻ってきた剛が俺の前にカップを差し出した。それと一緒にスプーンも。

「焼きプリン作ったの、」

受け取って見つめる。
甘くて、ほろ苦い香り。
手に持ってじっと見ていたらくふっと肩を揺らしながら隣に座った。プリンとスプーンを俺から奪ってひと匙掬う。

「はい、あーん、」
「ん、」

口を開けたら入ってくるひやっとした食感。うまい。甘い。
蕩ける。

「うま、」
「んふふ、今日は少しほろ苦くしてみた、」

美味しいでしょ?
見上げてくる瞳にくらっとする。

ほんで、何悩んでるの?って聞いてくるからなんでもない、と首を振る。

腰を抱いて膝に招くと肩を竦めた剛が今度はひと匙掬って自分の口へ。うまぁいって、蕩けそうな笑顔で呟く。
つい、ついつい。
ムクムクしてしまう。

腰を撫でて、腿に触れたら剛がムッとした顔して俺を見た。えっちぃって目を細めるから抱き付いて首筋に顔を埋める。

「あ、まって…っ、」

甘えた声で、持っていたカップを机に置いた。俺から離れるように身を捩りながらもぞもぞする。

「ん、なによ。」
「まってぇ、いい匂いのやつ、つけるから、」

降りようとする腰をグッと押さえて今度は座面に組み敷く。

「いいって、」
「ん、だめやってぇ、ボディオイル…、」

においが、とか何とか。
何やらやっぱり気にしてる様子。

「風呂入ったじゃん、」
「んぅ、入ったけど、ちゃんとボディケアしてから、」
「じゃ、えっちの後、もっかい入ろう。」

シャツを捲って、胸の脂肪に吸い付く。
食むっと唇で挟んで胸の輪郭を舌でなぞる。

「ん、ふ、ぁ…っ、こぅいち…っ、」
「ん。大丈夫やから、」

股の間に手を忍ばせてパンツの上から撫でる。ハーフパンツを下ろしたら派手な下着に卑猥なシミを作って剛が首を振った。

いやいやって、嫌がる割には興奮してる。

ペロンと引っ提げたらぷるんと出てきた可愛いちんこ。もう、とろとろに濡れてる。

「ふふ、ベトベトじゃん、」

ちょっと意地悪く言ってやったらムッとして俺の股間に触れてきた。

「光ちゃんやってぇ、」
「ふふ、」

お互い様じゃん。
囁きながら剛のちんこを握る。その動きに合わせて剛も俺のペニスを取り出す。

「兜していい?」
「んふ、おちんちんでちゅう?」
「ん、そう。」

いいよって、小さな手のひらが二つの性器をギュッと握った。上下に擦って手のひらで撫で撫で。
むわっとした香りが充満。
剛と俺の匂い。

兜合わせて腰を揺する。

目を閉じた剛が先の太いところをぬちぬちと擦り合わせて。
えろくて、いい顔。

「ふふ、気持ちいい?それ好き?」
「ん、…っ、すき…っ、ここ、…これぇ、こりこり…っ、」

指の先で摘みながら二つ性器を重ね合わす。お互いの腰が揺れてカウパーが混ざり合う。

「いいねぇ、…上手、」
「んふ、…っ、あ、ん…っ、」

揺らしながら剛の孔に指を埋めた。乾いたそこをカウパーを使って解していく。てらてらと体液が擦りあって粘膜が混ざる。

「…っ、ふ、あかんわ…っ、」

少し強引にペニスを手のひらから引き抜く。
そのまま拡げた孔に埋めてゆっくりと内側の襞を堪能。

「ん、…っは、ぁ…っ、すげぇ…っ、」
「あ、あぁ、ん…っ、あ、ん、あん…っ、」

お互いの腰が密着して高め合う。
揺らして、擦り合わせたらくっ付いたまま絶頂。押し寄せてくる射精の波に身を任せて何度も腰を打ちつけた。


ーーーー


楽屋がざわつく。
稽古場にいた数人も慌てて駆けつけてくる始末。

輪の中心で肩を揺らす剛が時折チラッと俺を見た。

「剛くん、来るの珍しいですね、」

ライバル役の彼が呟いて、すかさず松がそうなんだよ、ってかなり自慢げ。
何年かに一回だからな剛が楽屋に来て子供たちと挨拶するの。その時いた子しか会えないからツチノコレベル。

良いこと起こりそう、そんな話を数人がしている。

朝、帝劇に入る前剛にメッセージを送ったのだ。時間があるなら、越と松に会いに来てって。なんで?ってすごく不思議そうだったけど、たまに会いにこいよとかなんとか、他の2人にはこの間会ったんだろ?ってかなり強引に押し切って誘った。
渋々なんだか、わくわくなんだかよく分からないが、その後すぐに剛が顔を出した。
手ぶらもアレなんで、差し入れを、となんかお洒落なもん持って来て配ってる。

それと同じ時期に偵察部隊も到着。

それから控室はてんやわんや。
後輩も、スタッフも久しぶりすぎてわちゃわちゃしている。

遅れること数分、例の後輩が天才くんと顔を出した。最近毎日来てるってこの間、偵察隊も言っていた。恐らく今日も来ると思った、だから来たらこっちに招待するようチーフに指示を出したのだ。

扉を開けて入って来たその子が俺を見てパァッと笑顔になる。光一くん、て。
向かい側から身を乗り出す勢い。

「おぉ、」
「え、なんで?どうしたんですか?」
「ん?…剛がいるからね、」

視線を向けたら、ふぅんと剛を見た。剛も気になるみたいで、少しだけこっちを見たり、他の子たちと話したり。

「返したいもん、あってさ、」
「返す?」

キャッキャと、楽しそうに話していた彼が一度身を引いて座った。俺の隣に来てもいいか?とねだってくるけど、それは一旦は無し、と首を振る。
剛の近くでわちゃわちゃしていた、偵察隊もどうやら気になる模様で少しずつ俺の方に寄って来てる。

近くの鏡台から小瓶を一つ取り出す。

「これ、返すわ」

目の前に置いた香水の瓶。
後輩がじっと見たあと、俺の方へ顔を向けた。

「…ぁ、………剛くんの、」
「うち、犬いるからさ、香水はちょっとダメだわ、」

他のボディソープとか、その他の話は取り敢えず伏せておく。

「あんまり匂いキツいの、困るんだよね、」

伝えたら、彼が僅かに俯く。
隣に来た剛が、少しだけ困惑した様子で。

机に置いた香水の瓶へ手を伸ばした。
思わずその手を取って握る。手の甲を鼻に近付けながら剛の匂いを嗅いだ。

「ぁ…ちょ、と…光一、」
「なんか、におう?香水必要なほど?」

首を傾げたら目の前の彼が首を振った。
うるっと瞳に溜まる水分。

「だって、いつも光一くんの匂いがするから、」

ボソッと呟く。
一緒に過ごした次の日はとくに…。

震える声で呟いたあと、ごめんなさいと謝って楽屋を出て行った。あ、剛が慌てるから握った手に力を込める。
剛の背後にいた、2人の偵察隊へ視線を送る。察した彼らは何も言わずに後輩を追いかけて行った。

「よし、本番前、みんな楽屋戻れ、」

手を叩いて楽屋から子供たちを追い出す。
残った剛がじっと俺を見てる。
ムッとした顔して。

「なんだよ、」
「…性格わる、」
「うん、」

頷いたら剛が俺の肩をグーぱん。
多くは語らない俺の何かを察したのか、ため息を吐いて剛がもう一度呟く。

「性格わる、」
「んは、…そうだって、」

でも、真相分かったじゃん。
この一言は言わずに飲み込む。

帰るね、振り向いた剛が一歩前に進むから俺も、今日、夜帰るわ、と伝える。机に置いた香水の瓶を手に取って、剛がくふっと笑った。

「この香水、全部被って待ってるね。」
「は、?」

んふふ、と笑いながら剛が楽屋を出て行く。見ず知らずのヤツからもらった香りを身に纏う恋人はやっぱり不愉快だ。

嫌に決まってる。

ーーーfinーーー omake* #2
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