小説 短編集.10

□お叱り。
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んぅ?

スマホのロック画面に大量の通知が来ている。

なんやろ?
めちゃくちゃ来てる。

全部光一から、スライドしてアプリを開いたら大量の写真。
それも、おそらく殆どスクショ。

全部ぼくの投稿サイトに上げたストーリーズをスクショしたものばかり。
4枚はある。

これが一体どうしたのか?
首を傾げながら、なぁに?って送ってみる。
直ぐに既読は付いた。

“こら、なんだい?この写真たちは。”

ムッとした口調が篭ってる。
言い方までイメージできるからつい笑ってしまう。

“は?”

送り返したら、ついに電話が来てしまった。

「はぁい、」
『こら、はぁいちゃうがな、』
「んふ、なによー、」
『なによー、じゃないっ。お前、なんだ、あの写真は。』
「…えー、可愛いやん?」
『いや、…、』

受話口の向こうで口籠る。
可愛いとかの問題じゃ無いのだとか。

あんな、際どい。
破廉恥な、際々な写真を一体何人の男に見せたんだ?と。

「何人て、…、メイクさんとスタイリストさん、あとは天才くんしかおらんかったけど、」
『な、…っ、おまえ、』

また、受話口の向こうでぷりぷりした声音。
何か問題ですか?みたいな言い方をするんじゃ無い、と。

『あんな、えっちな格好…、』
「えっち?どこが?」

ほんまに、何が問題かしら?
首を傾げてスピーカにしてみる。もう一度画像を開いて何が問題なのかな。じっと写真を見る。

『お前、おっぱいが、見えてるじゃ無いか、』

斜め上から撮ったぼくのノースリーブカットのタンクトップ姿。
たしかにちょっとおっぱいの盛り上がりはなんとなーく分かる。

「でも、乳首見えてへんもん、」
『ば、っ…あほか、乳首が見えてる、見えてないの問題ちゃうねんっ、』

既におっぱいは見えちゃってるでは無いか、と。そうかなぁ?
ダメかなぁ?
そのほかにも、腿のラインが見えるえっちな座り方がどうの。
口にクリームを付けてむぅっとした唇がどうの。
出てくる、出てくる。文句が。

「ええやん、可愛いから、」
『だから、そう言う問題じゃ無いっての、』

焦りなのか、怒りなのか、呆れなのか、口調が標準語に戻ってる。

『お前は、お父さんに叱られたいんか?』
「んふ、なによぉ、それ、」
『ちょっと、目離すとすぐ破廉恥な格好して、』

可愛いけど。
可愛いから、気をつけろとかなんとか。
ぶちぶち、もごもご。

「んぅ、怒ってる?」
『ここらで、一喝せんと、エスカレートしそうやんけ、』
「しないって、」

実はもっと際どい写真を2度ほど撮った。
流石にスタイリストさんと天才くんに止められた。怒られるって。
ぼくもきっとめちゃくちゃ叱られるけれど、止められなかった我々も怒られるって。本気で止めに入られた。

だから諦めたのだ。

それから、ちょっとおとなしい写真にしたのに。それでも、こちらのお父さんはどうやら不服なようで。

「だめぇ?」
『ん。だめ、』
「ん、ふ、ふふふ、」

どうしようかなぁー。
笑みを含んで伝えたら、またお父さんがこら、と一言。

『帰ったら、叱るからな。』
「えー、なぁに、それ。」
『なぁに、ちゃう。お仕置きや、』

ぶすっとした低い声。
どんなお仕置き?って聞いたら、ふんっと息を吐いた。ちょっとだけ口をもごもごしている印象。

「ね、ぇ。どんな、お仕置き?」

中々言わないから逆に聞いてみる。

『ん……、い、色々や、』

逆に戸惑った雰囲気。
それがおもろくて笑ってしまう。実際ベットに入って酷くお仕置きをされるのはぼくだけど。こう言う時の言葉遊びは、ぼくの方が大好きだし、一枚上手。

困った光一の声音が面白くて、堪らない。

「んふぅ。じゃぁ、お父さんのお仕置き楽しみに待ってるね、」

囁いたら、むっと光一が押し黙った。
暫く沈黙したあと、わずかな呼吸が聞こえた。ボソッと一言。
ほんまに覚えておけよ、聞こえた声に口元が歪む。

「こわぁい、」

くすくす、笑って電話を切る。
ちょっと煽りすぎちゃったかな。
たまにこう言うのもありでしょ。

天才くんとスタイリストさんに必死に止められた写真を一枚フォルダから呼び出して送信。

既読はすぐに付いた。
返事はない。

それが妙にリアルで少しだけドキドキした。

ーーーfinーーー 〈SM/緊縛/玩具〉
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