鈍色の空を変える方法
□寝顔
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目が覚めると一郎が腕の中で寝ていた。
何時もなら自分よりも早く起きて朝食を作ってくれている。
しかし、今日は珍しく自分の方が早く目が覚めたようだ。
「スマホどこだ・・・?」
起こさないように少し身体を起こして、昨夜枕元に放り投げたスマホを探し出す。
今日は久しぶりの一郎との休日のため、一郎との関係を知っている叔父貴に連絡を出来るだけ入れないで欲しいと伝えておいた。
その為かスマホは鳴ることなく、無事この時間まで寝ることが出来た。
スマホで時間と連絡がなかった事を確認し、そのまま煙草を吸おうと起き上がると寝ている一郎が声を上げた。
「さまとき、さん・・・」
「あ?起きたか?」
布団を軽く捲り、起きたかと声をかけるがどうやら寝言のようだ。
一応寝ていることを確認し布団を掛け直すと眉間に小さく皺が寄った。
そんな一郎を眺めているともう一度名前を呼ばれ、ベッドに突いている手に頬を擦り寄せてきた。
「さまときさん・・・」
「ったく、しかたねぇな・・」
顔を歪めた理由がわかり、ため息を吐いて布団に潜り直す。
すると寄っていた皺が無くなり、心なしか嬉しそうな表情になった気がした。
そんな一郎をもう一度抱き寄せて前髪を梳き、額に唇を当てもう一度眠りについた。
「おやすみ、一郎」