鈍色の空を変える方法

□弱い所は
1ページ/1ページ



「なぁ、左馬刻さん」

「あ?」

「後ろ向いてくれ」

「・・仕方ねぇな」

「すんません・・・」

たまたま忘れ物を取りに立ち寄った溜まり場には先客がいた。
顔を見れば何かあったのか、笑顔を作り上げている。
そんな年下の恋人を連れ、帰宅し食事を済ませ酒を煽る。
すると、洗い物を終わらせ座っているソファーに俯きながら近づいてきた。
そして、冒頭に戻る。
ため息を吐き、一郎に背を向けるとソファーの軋む音がした後、背中に額を当てられた。

「・・くっ・・・」

「・・・なぁ、一郎」

「なん、すか・・?って、うわっ?!」

息を殺して泣いている一郎に声をかける。
平然を装うように返事を返されたので、体制を変えて振り向き倒れ込んだ一郎を抱き止める。
何が起きたのかわからず見上げてきた一郎に触れるだけのキスをした。

「んっ・・?!」

「・・・泣き止んだな。何勝手に泣いてんだよ」

「なっ・・なに、して・・・」

「嫌か?」

「いや、じゃない・・!けど・・・」

「んだよ?」

唇を離すと大きく目を見開いき、少しずつ赤くなっていく。
軽く頭を撫でると状況把握が出来ない様で、戸惑い始めた。
そんな一郎に小さく笑いながら声をかけると勢いよく首を振る。
そして言葉を濁しながらうつむかれたので、小首を傾げると上目遣いで見つめられた。

「ずりぃ・・・」

「大人はズルいもんだって覚えとけ」

「ホント、ずりぃよ・・」

「おら、あんま擦んなよ。腫れるぞ」

「っ・・・」

ずるいと赤くなりながら呟き、また俯いた。
そんな一郎にそう言うモノだと笑うと困ったように笑いながら目を擦る一郎の手をとり、頬に伝った涙の跡を指で拭う。
そして小さく笑いかける。

「ったく、泣き虫だな」

「さまとき、さ・・に、だけっすよ・・・」

「へいへい。頑張ったな、一郎」

そのまま泣き出した一郎が悪態つくが気にせずに軽く返事をし、キスをして抱き締めると背中に腕を回してきた。
あやすように頭を撫でると回されている腕に力が入った気がした。
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ