鈍色の空を変える方法

□雨は好きですか?
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*Part.左馬刻


雨が好きだ。
昔は嫌いだったのに。
雨が降れば外で遊ぶことが出来ない。
部屋に引きこもるしかない。
母さんや合歓を連れ出すことが出来ない。
騒音に聞こえる雨音が大嫌いだった。
聞きたくない音は聞こえるのに聞きたい音は遮らえる。
いつからだろうか。
雨音がこんなにも静寂をくれると知ったのは。

「左馬刻さん!!」

離れた場所から聞き慣れた一郎の声に振り向くと傘をさしながら嬉しそうに笑顔になった。
『おせぇよ』と吐き捨て、足元で倒れているモノには気にも止めずに一郎に近づいて行く。
雨は好きだ。
見せたくないモノを隠してくれる。
どんな騒音でも雨音が静寂をくれる。
汚れを洗い流してくれる様な感覚をくれる。
けど、きっと背負ったモノを洗い流す事すら出来ないだろう。
だから、感覚だけでもいいんだ。
合歓や一郎に汚れを見せないように。
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