鈍色の空を変える方法

□寝顔
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寝顔を見つめて



「ん・・・」

部屋に差し込んでいる光のお陰で大分部屋が明るい。
この部屋にこんなに光が入っていると言うことは、もうすぐお昼時だなと少し寝ぼけたまま考える。
遅い朝食の支度をしようと思うが昨夜のせいで身体が気だるく、動きたくない。
更に言うと後ろで規則正しい寝息を立てながら寝ている左馬刻の腕のせいでベッドから抜け出すのは難しい。

「どうすっかな・・・」

何度か抜け出す事は成功しているが、問題はその後だ。
抜け出すと左馬刻は寝ているにも関わらず、腕を動かして探し始めるのだ。
毎回その光景を見て、枕を入れたりと策を出すが分かってしまうのか不機嫌そうに眉間に皺が寄せられる。
しかし、それで起きる事はないようで静かに部屋を後にして調理に取りかかるのがいつもの流れだ。
だが、身体の怠さもあり今日は久しぶりにのんびりとするのも良いかなと思えた。

「っと・・・何時見てもキレーだよな・・」

「んぅ・・」

「やべ・・・」

起こさないように腕の中で向きを変え、少し下からのアングルで顔を眺める。
数年前に見続けていたはずの角度なのに離れていた期間があるせいか、見慣れない気がして少し心臓の音がうるさく思う。
ゆっくりと手を少し伸ばし、頬に触れると小さく声を上げ、抱き寄せられる。
起こしてしまったかと焦りながら顔を見上げるが、起きてはいないようだった。
先程と変わらず寝息を立てている左馬刻に無意識に頬が緩む。

「好きだよ、左馬刻さん」

そう小さく呟いて、左馬刻の胸に顔を埋める。
心音と左馬刻の体温に安心する様にゆっくりと睡魔が襲ってきた。
その睡魔に抗うことなく瞼を閉じたのだった。
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