頂き物

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予定していた乱闘が全て終わり、日も傾き始めた頃。

 自室で昼寝をしていたヨッシーは、まだ眠たげな瞼をこすりながら屋敷の廊下を歩いていた。



 すると、前の方を誰かが歩いている。

 赤帽子に青いオーバーオールを着た男。

 見慣れたはずのその後ろ姿に、ヨッシーは何故か違和感を覚えた。



「……ルイージさん?」



 思いつきを口にすると、前を歩く彼はこちらを振り返り、ホッとしたような表情を見せる。



「よかったぁ、気付いてくれる人がいて……よく後ろから見ただけで分かったね」

「もうずっと一緒にいるんだからそれくらい分かりますよ〜」



 のほほんとした様子で言ったあと、どうしてマリオの服を着ているのか尋ねる。



 するとルイージは半ば呆れたような顔を浮かべた。

 それはどうやらヨッシーに対してではないらしく、



「今日と明日は屋敷にいる人数が少ないから、食事は当番表通りじゃなくて臨時で役割分担する事になっただろう?」

「はい」

「それで、ジャンケンで負けた兄さんが今日の夕食の材料を買い出す事になっただろう?」

「はい」

「兄さんが『このクソ暑いのに外に出たくねぇ!』って……」

「なるほど……」



 要するに、ルイージがマリオの代わりに買い出しに行くことになったらしい。



 しかし、いい年した大人が買い出し程度でそこまで手の込んだ事をするのはいかがなものだろうか。

 ルイージが呆れるのも無理はないと思い、ヨッシーは苦笑を浮かべる。



「でも、僕だって気付いたのヨッシーが初めてなんだよね……何人かとすれ違ったのになぁ」

「まぁお二人は双子ですから、間違えるのも無理はないのかもしれませんね〜」



 そうでなければマリオの作戦は通用しえないのだが。



「……僕らしさって何だろ、やっぱり僕って兄さんのオマケに過ぎないのかなぁ……」

「何でそうなるんですか!?」



 そういえばルイージは以前、ルイージの格好をしたマリオのせいで酷い目にあった事があると話していた。

 自分が地雷を踏んでしまったとヨッシーが気付いた時には、ルイージは目に見えて落ち込んでいた。



「そんな事ないですよ!ルイージさんにしかない良い所はたくさんありますよ!例えば……」



 咄嗟に言った言葉に、ルイージは目を輝かせる。



「えっと……例えば……うーんと……」

「……いや、無理して捻り出そうとしなくていいよ」



 買い出しに行ってくるね、とルイージは外へ向かってしまう。



「ルイージさん……」
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