Dearest @

□第5話
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次の日の朝、身支度を整えた私達は、アスピオを目指し歩き始めた。


その途中、エステルからマップを借りたレオナは、現在地がどこら辺なのか把握している真っ最中だ。


そのマップは大陸が大まかに書かれているもので、もっと細かく載っているマップは無いのかと尋ねると、街など細かい情報が載っているものはあまり出回って無いそうで……。


なので、帝都を出てからは自分たちで地図を書き込みながらマップを作製しているらしい。


そんな中、カロルがエステルに質問攻めをしていた。


「ねぇ、実際の所フレンって本当に誰なの?エステルの訳ありな人?」


「なんです?その訳ありな人って?……フレンはユーリのお友達ですよ?」


「ま、そんなところだ。」


「友人同士で1人の女性を?見かけによらず、エステルってどろどろな人生送ってるね。」


「……違いますっ!それにユーリはレオナの事、気になってるんですよね?」


マップを見ながら前を歩いているレオナに聞こえないよう、にっこりと笑ったエステルはユーリに問い掛ける。


「えぇっ!そうなの……?」


「……勝手な事言ってな。」


驚きを隠せないカロルと、不機嫌になるユーリ。


「あ、でも……もしフレンがレオナを好きになれば……!どろどろな人生になりますねっ!!ちょっと楽しみですっ♪」




「え、エステルって貴族のお姫様なんだよね?」


「多分な。……こりゃ天然なのか、腹黒いのか分からねーな……。」


「ワフーンっ……?」


妄想を膨らませる彼女に、少しずつ距離を置く2人とラピード……。


そして、そんな会話が繰り広げられてるなんて知る由もないレオナであった。





「あ、あそこじゃない?」


先頭を歩いていたレオナは前方に見えてきた、薄暗く灯っている岩場に囲まれた洞窟を指さす。


そして近寄ってきたエステルに持っていたマップ返すと、みんなでその洞窟へと足を踏み入れたのである。



―――――――――――――




「此処がアスピオみたいですね……。」


街の中へと足を踏み入れた私達は、辺りを見わたす。


「薄暗くてジメジメしてて……おまけに肌寒い処だね。」


「まぁ洞窟の中だからね……。」


「太陽見れねぇと心までねじくれんのかね……魔核盗むとか。」


「まぁまぁ……ここになら図書館とかありそうだよね?ちょっと覗いてもいい?」


「……そうだな。」


街の奥を睨みつけるユーリに声を掛け、レオナは図書館があるのなら足を運びたいと言葉を漏らす。


するとユーリもエステルも快く頷いてくれたのであった。


「通行許可証の提示を願います。……此処は帝国直属の施設だ。一般人を簡単に入れるわけにはいかない。」


街のへと続く門の所に騎士団らしき人が立っていて、私達の行く手を阻む。


「……そんなの持ってるの?」


カロルの問いにユーリは首を傾げる。


「中に知り合いがいんだけど、通してもらえない?」


「正規の訪問手続きをしたなら、許可証が渡っているはずだ。その知り合いとやらからな……。」


「いや……聞いてないんだけど。入れないってんなら呼んできてくんないかな?」


はやり許可証が無いと入れないようで……。


モルディオを呼んできてもらおうとユーリは騎士団にお願いした。


「その知り合いの名は?」


「モルディオ……。」


「「……っ!!!」」


モルディオの名前を口にしたとたん、顔色を変えた騎士団。


「も、モルディオだと!?」



「「「「……?」」」



「やはり、駄目だ。書簡にてやり取りをし、正式に許可証を交付してもらえ。」


モルディオと関わりたくないのか、さっきまでとは打って変わった態度をする騎士団の2人。


「ちぇ、融通きかないんだから……。」


呼んできてもらえないと悟ったカロルも小言で文句を言う……。


しかし、騎士団の2人にも聞こえていたようで彼らを怒らせてしまった。


それに気づいたカロルはびくっと驚き、レオナの背中へと隠れた。


……隠れるくらいなら最初から言わなければいいのに……。


「あの、フレンという名の騎士が訪ねて来ませんでしたか?」


「施設に関する一切は秘密事項です。些細な事でも教えられません。」


今度はエステルがフレンについて尋ねるも、騎士団の2人に冷たく返されてしまう。


「……フレンが来た目的も?」


「勿論です。」


「……ということはフレンは此処に来たんですね!」


「し、知らんっ!フレンなんて騎士は……。」


エステルのその言葉に慌てた騎士団はもう口を開けることは無かった。


伝言だけでも……そう続けたエステルだったが騎士団は聞く耳をもたず……。


「やめとけ、こいつらに何言っても時間の無駄だ。」


此処に居てもフレンもモルディオも呼んでは来てはもらえないようだったため、私達は他の作戦を考えるために、渋るエステルを連れ門から遠ざかったのである。
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